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ジャンル:双眼鏡
ブッシュネル社の扱い安くコンパクトな8倍双眼鏡に、ミルスケールを搭載した日本限定モデル。
執筆時期:2019年3月
※本製品を提供してくださったT氏に感謝いたします。
SPECS │ 性能諸元
メーカー名(メーカー国・製造国) | BUSHNELL (アメリカ合衆国・中華人民共和国) |
サイズ(縦×横) | 12.2×11.2cm |
重量 | 580グラム |
アイリリーフ | 16.5mm |
対物レンズ径 | 32mm |
倍率 | 8倍 |
視野(FOV) | 131m / 1000m |
画角 | 7.6度 |
プリズム | ルーフBak4 |
ひとみ径 | 4mm |
防水・防曇性能 | あり(詳細な性能は不明) |
価格 | 20000円前後 |
ミルスケール内臓で距離まで計測可能
某国防組織で勤務している知人のT氏から、演習でも使える調子のいい双眼鏡が欲しいという依頼を受け、ブッシュネル社の本製品を購入した。ブッシュネル社は、戦後に米国カンザス州にて作られたハンティングやミリタリー向け製品を製造している有名メーカーなので、知っている人も多いだろう。要望事項として、ただ遠くを眺めれるだけでなく、距離測定等もしたいので、ミルスケールを内蔵しているもので、なおかつ2万円程度まで値段を抑えた物が良いとのことだった。
選定にあたり、下記の他社製品も考慮した。
○サイトロンジャパン SAFARI SC821BR(5000円前後):8倍率ながら、ポケットサイズの軽量コンパクト機。ミルスケール内蔵で値段も最安クラスだが、防水機能が無い。
○POSEIDON 8×21WP-B(7000円前後):8倍率。たまに駐屯地売店でも売っているのを見かける。日常生活レベルだが防水あり。
○サイトロンジャパン TAC-1025(12000円程度):10倍率で完全防水。
T氏はそれまでサイトロンジャパン社のTAC-36Mを使用していた。7倍率でミルレティクル内蔵で17500円程度の本製品も、コンパクトで使いやすく、日本製だということもあって駐屯地の売店でちょくちょく売られており、愛用している隊員も多い。
→ちなみに、TAC-36Mの単眼鏡バージョンのTAC M728もある。
それ故、今回はより倍率が高く、明るいレンズを搭載した機種を提案してみた。それが今回紹介する製品であるブッシュネル TROPHY XLT 8×32のミルスケール付きだ。
●少しぷっくりした外観で、深緑色のボディカラーがクールだ。各所に滑り止めやチェッカリング等もついているので持ちやすい。
●グリップはラバー製のソフトグリップだが、塵やホコリが付きやすいゴムっぽいタイプではなく、サラッとした手触りだ。
●サイズは約12×11cm、重量は580グラムで、私のようなホビット族でもこれなら携行してもいいかなと思えるサイズ。これ以上大きくて重いと、拠点を構えての監視任務ならまだしも、徒歩行軍や偵察任務では邪魔になるかも。
●接眼レンズはグリーンやブルー、赤紫系のコーティングが施されている。
●アイリリーフは16.5mm。眼鏡をしていてもとりあえずは使えるレベル。広い視界を得たいならやはり裸眼で覗いた方がいい。
●対物レンズはグリーンとブルー系のコーティングだ。
●対物レンズ径は32mmで、このくらいが適度に明るく、軽量なレンズ径だろう。
●中央ロゴマーク入りのピントリングは、大きくてつかみやすく、スムーズに回る。
●ただ近~遠距離等の距離だと、ピント合わせをするのにちょっと回転量が多いのでたまにじれったく感じることがある。
●ピントリングだけでなく、視度調整リングや眼幅調整共に可動部はどれもスルッとざらつきや引っ掛かりがなくスムーズに動いてくれる。
●左右の突起はストラップホール。
●パッケージはいかにもやる気満々なハンティング用品と言った感じだ。
●付属品は日本語説明書、立体成型された携帯用ポーチと袋、2点式ストラップ、安物中国製光学機器によく付属している青いレンズクリーナー。
●この製品の泣き所としては、レンズを保護するレンズカバーが付かない点だが、そこはポーチで我慢してほしいということだろうか。
●T氏曰く、ストラップのメーカーロゴは目立って業務上差し支えるのでサードパーティー製に変更するそうだ。
さて、ここまでは本国アメリカで販売されているブッシュネル社 TROPHY XLT 8×32なのだが、本製品は右レンズにミルスケールレティクルを搭載している。どうもこれを搭載して販売しているのは日本だけのようだ。
→ミル(Mil:ミリラジアン)はNATO諸国の軍等で使用されている平面角単位で、測距等で使用される。
※画像クリックで拡大可
●レンズはこの値段としてはなかなか明るくてクリアだ。中央部付近の解像度も高い。この明るさだと、夕暮れ時だけでなく、満月の夜にもある程度の使用は可能だろう。
●レンズ周辺部には歪んで流れるような像面湾曲が見られるが、この値段を考えれば十分許容範囲内だと思うし、気にならない。
※画像クリックで拡大可
●前述した通り、本製品は右レンズ内に上下左右60ミルずつのミルスケールを搭載している。
●ミルスケールは5ミル毎に区切りが、10ミル毎に数字が印字されている。非常に見やすくわかりやすい。
●これにより、ターゲットまでの距離やターゲットの大きさ等を計測することが可能になり、ハンティングや軍事オペレーションで役立つことができる。
●ターゲットまでの距離を計測する場合(前提としてターゲットの大きさがわかっている必要がある)
・計算式は対象物の大きさ(メートル)×1000をミル数で割る答えが出る。
・e.g.:身長190センチの人間を双眼鏡で覗くと、15ミルの高さに収まっていた→1.9(メートル)×1000を15(ミル)で割ると126.6→その人間は126.6メートル先にいることがわかる!
●ターゲットの大きさを計測したい場合(前提としてターゲットまでの距離がわかっている必要がある)
・計算式はミル数÷1000に距離(メートル)をかけると答えが出る。
・e.g.:6キロ先の原子力発電所をムートーが襲撃しており、双眼鏡で覗くと10ミルに収まっていた→10(ミル)×1000に6000(メートル)をかけると60→ムートーの大きさは60メートルと判明し、少し小柄で羽も生えているので、オスであると思われる。
Conclusion | 総評
●本製品は防水設計ではあるが、どれだけの水量に耐えれるのか等の詳細は公表されていない。だが、悪天候や過酷な活動が多い訓練等で不具合が起きた等の報告は今のところ無く、その他ハンティングで利用している人たちのレビューを見ても、タフで信頼性のある双眼鏡だと好評のようだ。
●より明るいレンズや信頼性を求めた場合、どうしても双眼鏡そのものが大きくなったり、値段が何倍にも跳ね上がってしまう。そう考えれば、2万円前後でこのレンズの明るさとコンパクトさ、そして様々な活用が期待できるミルスケールを搭載している機種としては非常にリーズナブルで良い選択肢となるだろう。