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ジャンル:アイアンサイト、バックアップサイト

立てても倒しても使える照準器

執筆時期:2025年11月

検証人数:2人

実弾射撃評価:有り

→Type20 – 5.56x45mm弾及び空砲弾

→Type89 – 5.56x45mm弾及び空砲弾

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) STRIKE INDUSTRIES(アメリカ合衆国・不明)
サイズ(全長x幅x高さ) フロントサイト:26×20.5×50.02mm
  リアサイト:26×20.5×50.14mm
重量 フロントサイト:17グラム、リアサイト:19.8グラム
本体材質 高強度ポリマー樹脂
希望小売価格(購入価格) 84.95ドル(2024年、62ドルで購入)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 ボーナスサイト付きで広がる使用用途
  軽量薄型設計
  精密射撃や中距離射撃も行いやすい照星・照門設計
改善を要する点 ボーナスサイトのリアサイト幅が広すぎる
  リアサイトが背後から強い光を受けた場合、一部反射で目障りに感じることがある

ノッポとチビの両取り


少なくとも西側諸国においてライフル銃に光学照準器を載せることがもはやスタンダードとなり、昔ながらのアイアンサイトまたは照準器の立ち位置はバックアップサイトという名前の通りの予備役に徹することが多くなった。だからと言ってこの手の照準器が銃の上から一掃されるような事態にまではなっていない。特に不測の事態に備えなくてはならない軍用小銃においては、出番が減ったとは言えリストラをされることまでは無い存在だ。


今回レビューする製品の話に移ろう。幕府陸軍に所属している当研究会会員の一人が、20式小銃の備え付けバックアップサイトを気に食わんと言い、樹脂製でなんか妙に背が高いバックアップサイトに載せ替えた。そしてそれを見た私もとある特性から同じものを購入したのである。それが今回紹介するストライクインダストリー社の「Strike Polymer Backup Sights」である。

このバックアップサイトはリアサイトとフロントサイトがセットで売られている。価格は80~60ドル代であり、Magpulよりも少し安く、Fab Defenseと同じくらいの価格帯だ。

重量はフロントサイトが17グラム、リアサイトが19.8グラムと非常に軽量に作られている。


冒頭で当研究会会員が20式小銃のバックアップサイトが気に食わないからこれに載せ替えたと言ったが、別に20式のバックアップサイトの出来が悪いわけではけしてない。彼は20式が自分の所属部隊に配備されたはいいが、少し背が高い私物のAimpoint – Duty RDSLarue LT660 QDマウントの組み合わせでセットアップしている。そうなると、20式標準のバックアップサイトを含めたそこらの照準器だと高さが微妙に足りず、バックアップサイトによる照準ができなくなってしまう。と、言うことで標準よりも少し背が高いバックアップサイトはないのかと探し当てたのが今回の「Strike Polymer Backup Sights(SPBS)」である。ただの自己中心的なパーツ換装だなおい。

標準的なM16 A2の高さの照準器と比較して、2.3mm高いセッティングにしてあり、リアサイトの開口部の中心からレールの上端までの高さが38.3mm(1.51インチ)となっている。

故に、写真のHOLOSUN – AROのようなLower 1/3 Co-Witnessのハイマウントを使用した光学照準器越しに覗くと、通常の照準器だとレンズ下部1/3の高さに来るところ、この照準器だとレンズ中央より若干下くらいになる。

背が高く見えるが、あくまで2.3mm高いだけなので1.93インチハイマウントとかを用いた場合は見えなくなってしまうので注意を。


今回はフリップアップ式バックアップサイトの代表格でもあるMagpul社のMBUS 2との比較もちょこちょこやっていく。現在MBUSは次世代型のMBUS 3が販売されているが、このMBUS 2の所持者が今のところ大多数を占めていると思われるのでこちらを使用する。けして我が研究会が誰もMBUS 3を持っていないというわけではないぞ!多分…


フロントサイトとリアサイトを片側づつ見ていこう。まずはフロントサイトから。

フロントサイトの上下調整は工具無しで行うことができるダイヤルタイプ。樹脂ダイヤル独特の少し引っかかりを感じる動きだが、クリック感はある。

1クリックの移動量はフロントとリアの距離が36.83cmの場合は100メートルにおいて4.34cmであり、50.8cmの場合は3.15cmとなる。


フロントポスト(照星:照準を行う垂直に立った棒状のもの)の幅は1.4mmである。Magpul – MBSU(Gen2及びGen3)のそれが1.8mmであるため、細めである。ちなみに検定射撃において200~300メートルの射撃も行う89式小銃は1.3mmであるため、89式小銃ほどではないが精密射撃や中距離射撃に関しても期待できそうだ。

→この数値に関しては公式には記述が無かったためこちらで計測。

フロントサイトガードはスリムな直線タイプである。


リアサイトの左右調整は左側面にあるダイヤルで行う。フロントサイトのそれよりもかなり固く、カチッとしたクリック感ではなくゴクッゴクッと重く動く。

1クリックの移動量はフロントとリアの距離が36.83cmの場合は100メートルにおいて1.24cmであり、50.8cmの場合は0.89cmとなる。


リアサイトポストはカチッカチッと上下にスライドすることができ、開口部を夜間やCQB戦闘用の大きな4.7mm径と、精密射撃や中距離射撃用の1.75mmに切り替えが可能だ。

89式やMBUS含むA2・AR-15系の最低開口部が概ね2.5mmほどなのを考えると、こちらの最低開口部が1.75mmというのはかなり小さな部類であることがわかる。

 

 

 

 



MBUSと比較するとその薄くコンパクトな作りの差がよくわかる。収納時の長さはMBUSが62mmなのに対し、こちらは48.2mmであり、厚みはMBUSが32.5mmに対し26.5mmと圧倒的である。

MBUS3はMBUS2に比べてコンパクトになっているが、このSPBSはよりコンパクトでその他バックアップサイトと比較してもその点が強みである。

特に立てた際は背が高くなる特性があるにも関わらず、土台が短いため折りたたみ時にはあまり長くならないのは良い。


照準器の大部分はストライクインダストリー社の独自配合で作った強化ポリマー樹脂である「SI Polymer Extreme」によって作られている。

右側面のネジ部分の取り付けタブと、ネジ穴についてはスチール製となっている。


マウント部底面にはリコイルラグ設けられ、銃器の反動に対してのずれや緩み防止になっている。

この製品、ストライクインダストリー社のライセンスと設計の元、製造は台湾のエアソフトメーカーであるMADBULLが行っている。そのため、当初エアソフトガン向けの製品と思っていたが間違いであり、実銃及びエアソフトガン両用として販売されているようだ。


不意に起き上がって来ないよう、この照準器の起き上がりにスプリングは使用されておらず手動で行う。

トグルスイッチのようにカチッカチッとした音で上げ下げが可能で、テンションはけっこう固め。展開時収納時問わず余計なガタつきはない。

ヒンジ部の隙間から見える赤い金属パーツはおそらく上げ下げに必要な板バネだと思われる。できればこのパーツも目立たないマットな色合いにしてほしかった。


さて、この照準器は背が少し高い以外にももう少し個性的なポイントがある。それは、照準器を下げた格納状態でも拳銃に付いているような凹凸の照準器があることだ。(公式ではボーナスサイトと呼称している)

リア、フロント共に照準部にはチェッカリングがわかりやすく刻まれており、反射防止にもなっている。

フロントサイトは中央に縦溝があり、写真のように好きな色でペイントして目立たせることが可能だ。


こいつの使い方は写真のScalarworks – LEAP01や04のように、中央が空洞になっているオプティクスマウントを使用している際、バックアップサイトを立てる暇も無いような状況での緊急用照準器として使用できることだ。

また、FNP90のようにマウントレールがせり上がっており、照準器を低く抑えるのが好みの人にも良いだろう。

このボーナスサイトの高さは、フロントがレール上部から13.82mm、リアが14.2mmとなっている。

このギミックはH&K社のサブマシンガン MP7に標準搭載されている照準器と同じだ。今まで市販で入手しやすい幾多の照準器の中でもありそうで無かったものだ


しかし、私がこの異色の照準器を購入した理由は他にある。それは、写真のようにスコープの前方にフロントサイトのみを設置し、至近距離射撃での簡易照準器として利用するためである。これは、照準器を用いず勘撃ち(俗にPoint ShootingもしくはInstinctive Shootingと呼ばれている)を行うような、近距離かつ即座に射撃しなければならない状況下であるが、ターゲットに少しでも正確且つ自然に銃口が向くようにしたい距離感において使用するためだ。

距離としては5メートルから15メートルほどであり、何も照準器を用いず撃つのは少し不安、だけれどもスコープやダットサイトを覗く余裕が無いと言った、グレーゾーンっていうかあいまいゾーンで用いる。

照準器をフロントサイトのみ設置し、こんな使い方をすることがどれだけ稀なケースかは知っている。だがこれは私が今までの実戦や訓練で学び、効果を得られたが故の手法だ。


ここからは実際にどのように見えるのかを検証していこう。まずは折りたたみ時のボーナスサイトから。

※写真のフロントサイトは白のペイントを塗る前の状態です。

※本当は標準的なM4A1カービン銃の照準器の設置間隔(サイト半径)である14.5インチ(36.8cm)に設置したかったが、撮影機材の関係で20cmほどで撮影していることをご了承願いたい。

これは見てわかる通り、リアサイトの幅がちょっと広すぎる。いくら緊急時用の照準器とは言え、PCCやSMG、小銃用途で使用する照準器なのでもう少し狭めるべきだ。

こちらで計測したところ、フロントサイトの幅が3mmなのに対してリアサイトは5mmある。あと1mmは狭めるべきだ。


次は照準器を展開し、リアサイトが夜間やCQB戦闘用の大きな4.7mm径の状態。

標準的な近距離戦用の大きさであり、50メートル以内の戦闘で素早い照準が可能だ。


こちらは精密射撃用の1.75mm。

リアサイトのみならず、フロントサイトも比較的幅が薄く設計(1.4mm)されているため、ターゲットまでが長い距離であっても余裕を持って狙えそうだ。

撮影機材の都合上、本来なら30cm以上リアとフロントを離すと、この状態でもフロントサイトガードが見える視界となる。

50メートル照準

屋外に出てしっかり距離を取ってみよう。ターゲットは高さ180cmに吊るした青いツナギ服。


これくらいの距離だと、ターゲット周辺の状況も認識しやすくなるため、リアサイトの穴が4.7mm径の状態が精密射撃をしないのであれば使いやすい。


こちらはフロントサイトにカメラのピントを合わせて撮影。

フロントサイト幅が小さめなので、ポイントを狙いやすい。また、先端が台形のようにすぼまっているのでより精密射撃にも寄与しやすくて良い。

この撮影時にはそこまで問題ではなかったが、背後から強い光を受けた場合、リアサイト上端の斜めにカットされている部位が反射で少し目障りに感じることがあった。ここは少し改善してもらいたい。

100メートル照準 │ MBUS 2との比較

今度は距離を倍にしてみよう。ターゲットは同じ。



やはりフロント、リア共に照準部位を小さく設計しているため、100メーカーであっても余裕でマンターゲットへの射撃が可能だ。

フロントとリアの距離間隔を14~20インチ(35~50.8cm)得られるライフル銃だと、100メートルでヘッドショット、300メートルでのマンターゲットへの射撃も余裕でこなすことができる。



こちらは同条件にてマグプル社のMBUS 2で照準してみた。

MBUS 2はフロントサイトポストを白く塗っているのでちょっとわかりにくいかもしれないが、フロントサイトポストは先程のSPBSと比べて幅が広く、リアサイト径も大きいのであまり距離をとっての精密射撃は難しい。どちらかと言えば100メートルくらいまでの近距離向けだ。

各種訓練、実弾射撃における使用感等


今回は私を含めた二人の研究員で実弾も交えた各種訓練や射撃を行って検証してみた。

まずはType20に載せて200メートル先のマンターゲットへの射撃を実施。Type89よりもフロントサイトポストの幅が1mmほど太いものの、これくらいの距離であればある程度の精密射撃は可能だ。さすがにヘッドショットを連発しろと言われれば難しいが。

次はCQBを想定した射撃も行った。フロントサイトガードがスリムな直線タイプなので、特にローレディやコンバットレディから構えると、ターゲットを挟み込むように自然とフロントサイトポストに持って行くことができる。Type20のフロントサイトは側面に少し出っ張りがある構造なので、このSPBUSのほうが視界にノイズが少なく照準を無意識にスムーズに行いやすいとの意見だった。

ただSPBUSはいくら強化ポリマーとは言え、樹脂タイプであり細身で背の高い外観なので、強度に関しては金属製の照準器はおろか、少し太めのMBUSと比較しても展開時にどこかに勢いよくぶつけた場合は破損する可能性は否めない。この点はSPBUSの金属モデルが出てくれると良いかもしれない。

また、幕府軍あるあるネタである銃器返納時には装着オプションはデフォルトの状態に戻さなければならないという状況も想定し、SPBUSをゼロイン後に一度取り外して再度取り付けて射撃を行ったが、200メートルにおいて左上に10cmほど着弾点がずれた。台座も樹脂であるが、大幅にマンターゲットを外すほどではなかったので予想より取付精度やロバスト性は良いかもしれない。


一方私は、SPBUSを購入した目的であるLPVO(Low Power Variable Optic:倍率可変可能な低倍率スコープ)の先端にフロントサイトのみマウントし、5~15メートルほどの至近距離射撃で簡易照準器として使用した。

実に狙い通りの成果を挙げることができた。薄暗い室内にて13メートルと5メートル先のマンターゲットへの射撃をこのフロントサイトを折りたたんだボーナスサイトのみでダブルタップで1秒以内に射撃をしたが、どれもマンターゲットの中心付近には着弾しており十分な成果を得られた。

今までこの射撃はLPVOのエレベーションダイヤル上端を簡易照準器に見立てて行っていたが、縦に白くマーキングできるSPBUSのほうがより精度よく射撃ができる。

→ただ、白くマーキングされたフロントサイトに集中してうまく当ててやろうと欲をかくと、余計な時間が取られてしまうのでそれだと本末転倒、注意が必要だ。あくまでLPVOやダットサイトを覗いて撃つよりも早く、なおかつ照準器も使わない勘撃ちよりは精度が高いという結果でないと意味がない。

Conclusion | 総評


近距離から中距離まで狙いやすい照準器だ。また、薄型コンパクトで軽量なのも装着していて邪魔にならない。

折りたたんだ際にも使えるボーナスサイトも便利だし面白い。アイデア次第で様々な使用用途がある。この機能に関しては他のバックアップサイトにも採用してほしいくらいだ。

ただ強度面では樹脂製でこのように薄型だと少し不安が残る。このサイトの金属製で、通常のAR-15アイアンサイトと同じ高さのモデルもラインナップしてくれると最高だ。