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ジャンル:訓練用・トレーニングナイフ

高価なエマーソン社のナイフを、デザインをそのままにお求めやすい価格で買えるカーショー社の「CQCシリーズ」。そのトレーニングナイフ、E-TRAINをご紹介。

執筆時期:2019年4月

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) Kershaw(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
デザインメーカー Emerson社
全長 約19.6cm
刃渡り(刃厚) 約8.1cm(約3mm)
重量 約146グラム
ブレード材質 3Cr13スチール
ハンドル材質 G10樹脂及び410ステンレススチール
価格(購入価格) 41.99ドル(国内通販にて3500円)

高品質で手頃な価格の折りたたみ式トレーニングナイフ

エマーソン社(Emerson Knivesという有名ナイフメーカーがある。90年台後半に米国カリフォルニア州で産声をあげたそのメーカーは、戦術的で扱いやすい折りたたみ式ナイフを作るメーカーとして、法執行・治安維持機関等で人気だ。そのため、スパイダルコ社やベンチメイド社のように映画やドラマ、漫画等での出演も多い。ただこのメーカーのナイフの泣き所は、どれも概ね2万円~3万円となかなかのお値段をするメーカーなので、おいそれと入手し難い点がある。


しかし、そんな我々貧乏人のためにエマーソン社はカーショー社(Kershaw)と救済策を提出した。それが、Kershaw CQCシリーズだ。デザインはエマーソン社のままで、お値段は驚きの10分の1程度(概ね2500円~4000円程度)に大幅プライスダウンし、非常に求めやすい価格帯になっている。

カーショー社も米国の有名ナイフメーカーで、安価で質の良い刃物を作ってくれることで人気だ。ちなみに現在は貝印株式会社の子会社。

もちろん、値段が下がった分はナイフの材質が高価な154CMから安価な8Cr14MoVへと変更され、各所でコストカットが見受けられるが、とても3000円程度で手に入るナイフとは思えないほどのコストパフォーマンスの良い折りたたみナイフとして、ハンティングやアウトドアユーザー、民間の護身用ナイフとしてベストセラーとなっている。

154CMは各種耐久性が非常に高いが、加工が難しくコストが上がるのが欠点。8Cr14MoVは中国製のステンレスで、硬くて粘り強いが少々錆びやすいのが弱点。


今回紹介する製品は、そのエマーソンとカーショー社のコラボ製品であるCQCシリーズの訓練用ナイフ、「E-Train」だ。

有名メーカーで、各種訓練に使用できる程度の信頼性を持った折りたたみタイプの訓練用ナイフながら、3000円代で購入できるのが魅力だ。他を見ればわかるが、折りたたみ式トレーニングナイフは、高価なものか粗悪な安物の両極端なものが多い。

全体として見て、曲線美が美しい良いデザインのナイフだ。普段の作業用ナイフとしてもCQCシリーズが人気なのも頷ける。ついつい手にして眺めて撫で回したくなる。

ちなみにE-TrainはEmerson Trainer(エマーソン・トレーナー)の略。


まず大きく目を引くのは、ポコンとえぐれたデザインをしているハンドル部だ。グリップが良く大変扱いやすい。戦闘用をある程度想定した折りたたみナイフなので、自傷を防ぐ観点からも良いだろう。

ハンドルの青い分はG-10樹脂で、これは片面のみ。滑り止めとして細かなチェッカリング加工がされている。


折りたたんでみよう。グリップの美しい曲線美が見事なナイフなので、折りたたんでも美しく完成されたデザインだと思える。

グリップ後部にある3つの小さな穴は後述するクリップの左右付け替え用の穴で、大きな穴はストラップ用だ。


裏面はSU410ステンレス製になっている。ストーウォッシュ仕上げとなっており、若干のザラつきがある。ピカンピカンに光らず、落ち着いた印象を与えてくれる。

付いているクリップは取り外し可能で、短めながら食いつきは良好。

ロック機構に関しても厚めで、グラつきや不安感は少ない。


折りたたみ時の全長は11.8cmほどで、全体の厚みは約1.2cm(クリップ除く)と比較的ロープロファイルで邪魔にならない。


そのため、ポケット等に入れていてもあまり気にせず作業をすることができる。

クリップの凹みに指をかけて取り出せばスルッと取り出しやすい。


刃渡りは約8.1cmで、CQCシリーズのラインナップからするとCQC-4KCQC-5K等のトレーニングナイフとして相性が良いだろう。

刃の材質は3Cr13で、こちらも中国製のステンレススチール。こちらもストーンウォッシュ仕上げだ。

実用ナイフのCQCシリーズには8Cr14MoVが用いられている。

丸められてはいるが、先端はちゃんとナイフの形状を少し真似て尖っているので、ある程度緊張感を持った訓練ができる。


刃厚は3mmで、ロック機構は値段の割にはしっかりとしており、防具を使った激しい訓練でも今のところ不具合等は無い。

刃の上に乗っている黒い円盤は、サムスタッドで、ここに親指を引っ掛かけると片手で展開ができる。エマーソン社のナイフの特徴の一つでもあるワンポイントだが、ちょっと手に食い込みがちで、余計な力が必要なので、私個人としてはこの円盤よりは、ビス式の方が好みだ。

刃の末端は、指を置きやすく滑りにくいように滑り止めと盛り上がるように突起が施されている。これは展開することで、そのままナイフのヒルト(ツバ)のような役目となる。


この突起に関しては、ポケットにクリップして携行した際に真価を発揮する。手前に少し引くように取り出すことで、突起がポケットに引っかかり、取り出すと同時にナイフを展開することができる。作業効率や、戦闘時の即応性の面からも良いポイントだ。


ナイフの持ち方に関しては個人の体格や運用方法、好み等に左右されるとこだが、えぐれたグリップ、親指を起きやすいナイフ末尾の突起を考慮すると、写真のようなセイバーグリップ(Saber Grip:フェンシングのサーベルのような持ち方から)が実にシックリとくる。薄手のハンドルや、手の邪魔にならないようにデザインされたクリップと相まって吸い付くようなグリップ感で好きだ。今まで触れてきた折りたたみナイフの中では、かなり上位レベルのグリップ感だ。

耐久性と並んで、ツバがあまりないフォールディングナイフ(折りたたみナイフ)では結局のところ付きまといやすい問題ではあるものの、グリップ感が良いのでスっぽ抜けも防ぎやすい。これなら、刺す動作も選択肢に入れやすいだろう。

ただ、手が大きな人や厚手のグローブをしている場合は少し厚みが物足りなく感じるだろう。


ギュッと握り込む順手持ちのハンマーグリップは、グリップの凹みに人差し指が引っかかりにくく、なんだか浮いているような感じがあり落ち着かない。これで刺したり切り払ったりするのは少し怖い。このナイフにはあまり向かない持ち方だ。

この持ち方だと、凹みに小指を引っ掛けることになる逆手持ちの方がしっくりときやすい。


逆手持ち(親指を柄にかけるタイプ)。セイバーグリップほどではないが、こちらもある程度そつなく持つことができる。各所に設けられているセレーションの恩恵はフルには授かれないが。


トレーニングナイフの材質は、このような金属製を始め、樹脂やゴム、木製等様々なものがある。安全性を考慮するのも当然ながら大切だが、本物のようにギラリと光る刃を持ったトレーニングナイフは、訓練をより実戦的に緊張感を持って行うことができる利点がある。言うまでもないが、肉や骨を断つ本物の刃物を殺意を持って向けられた際の恐怖は想像を絶するものがある。経験上、この怖さは銃を向けられた時よりも恐ろしかったものだ。なんにせよ、訓練を積んでいようがいまいと、そんな修羅場になった場合はほとんどの人は大変なストレス下に晒されるだろう。そんな時、リアリティーのある訓練を日頃行うことは非常に大切なことだ。本製品は、そんな訓練を手助けしてくれる手頃で良いツールとなるだろう。