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ジャンル:マルチツール・十徳ナイフ

マルチツールの代表メーカーであるレザーマンのミリタリー向けラインナップであるMUTシリーズ。その中でも、爆発物の取扱いに適した異色のマルチツールがこのMUT EODだ。

※MUT EODの提供をしてくれたY氏とT氏に感謝します。

SPECS | 性能諸元

 メーカー名(生産国) LEATHERMAN(アメリカ合衆国)
全長 12.7cm(収納時)
重量 317グラム
本体基本材質 ステンレススチール
 一般価格 日本:39420円 | 米国:169.85ドル

銃+爆発物の取扱に特化した異色マルチツール

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まずMUTシリーズに関してザッと説明しよう。MUTはMilitary Utility Tool(軍用多目的ツール)の略で、基本的なレザーマンツールに銃器メンテナンス用のツールが揃ったMUT Utilityと、今回紹介するMUT EODにわかれる。EODは、Explosive Ordnance Disposal(爆発物処理)の略称で、爆発物を仕掛けたり、処理したりする偵察隊や工兵、爆発物処理班の使用を考えたツール構成となっている。

Mut Utilityは、EODとの相違点として、プライヤーが通常のレザーマンと同じくシンプルなワイヤーカッターが付いているだけのものになり、C4パンチの代わりに自動小銃のAR15系・M4系のフレームロックピン抜き出しツールとなっている。

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レビューに移ろう。外箱はレザーマン特有の目が覚める黄色い紙箱だ。(上段2つは別売りのビットセット)

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説明書は、わかりやすいイラストで簡易的に多言語で書かれている。MUT2種、SUPERTOOL 300 EODと共通の説明書となっている。

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付属品が2つ付く。まずはタンカラーのベルトルーフ付きのポーチ。ゴムバンドとマジックテープで保持できるようになっており、水抜き用の穴もある。

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また、メガネレンチ(1/2と3/8)が付属している。このレンチが付属するのは初期だけのようで、現在は1/2のレンチの代わりに、AR15系・M4系の照星(フロントサイト)の調節器具に変更されているようだ。

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クローズ時の状態はこんな感じだ。300グラムのボディは数値以上に重量感がある。ズッシリとしており、マルチツールと言うよりはちょっとした鈍器だ。

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オープン時がこちら。ガジェット・メカ好きが好みそうな左右非対称の色と形はちょっとしたアクセントとなり、カッコよい。

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500mlのペットボトルと比べてみた。隣のシルバーのマルチツールは同社のウイングマン。(閉鎖時の全長は9.7cm)

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重さは300グラムを超え、大きさは13センチ近くある。軍用&特殊な用途なだけあり、日常的に使用するにはさすがに邪魔だ。上の一番小さなマルチツールはガーバー社のショートカットで、レザーマンの最小機種であるマイクラとほぼ同じ長さだ。(6.6cm)

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本体には、開閉防止用のロック機構もある。

TOOLS | 収納ツール・機能一覧

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① ニードルノーズプライヤー 

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ウイングマンのものよりも、先端は鋭利に尖っており、相変わらず精度も良いのでかなり小さなものでも掴むことができる。ただ、キャップクリンパーがすぐ下にあるので、プライヤーとして使える部分はあまり大きくなく、先端で掴むことになる。あまり太いものを曲げたりするのは不得意。

② キャップクリンパー(ミルスペック) 

電線と端子を一緒に潰して圧着接合するためのツール。爆発物関係では、電線及び導火線を信管とくっつける際に使用する。信管の中に導火線を入れ、このクリンパーでクチュっと潰し、合体させる。余談だがこの作業は爆発物である信管を潰すのでちょっと怖い。でも弱かったら導火線がすぐポロリしてマヌケなことになる。
③ ヒューズワイヤーカッター 

いわゆるニッパーとも。よく切れ、しかもこの手のツールとしては珍しく取り替えができる(レザーマン ワイヤーカッターセット9355)。ガシガシ気兼ねなく使える。

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④ より線カッター 

より線や、太いワイヤーを切断する時に使用する。
⑤ 電線潰し 

④との違いは刃が付いていないので、潰すだけの作業がしたい時に。

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⑥ 440Cコンボナイフ 

刃渡り7.6cm。切れ味もよく、しかも研ぎやすい刃だ。ロック機構もしっかりしているので、気兼ねなくラフに使うことができる。波刃と直刃の組み合わせで、直刃であっても案外ツルツルの紐もスパッと切れる。

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⑦ ノコギリ 

ちょこっとした作業に。そんなに太くなければ金属パイプでも切れる。

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⑧ ビットドライバー差込口 

付属や別売りのビットドライバーを接続する場所。接続するのは、レザーマン専用のリバーシブルなビットドライバーで、付属品のものは「トルクス♯15 & 7/64六角」、「プラスドライバー♯1-2 & マイナスドライバー3/16」、「プラスドライバー♯2 & マイナスドライバー1/4」の3つ6役が付属している。「トルクス♯15 & 7/64六角」と「プラスドライバー♯2 & マイナスドライバー1/4」は付属や別売りのビットキットよりも倍の長さになっている。

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別売りのセット(ビットキット)は21個42役のビットセットで、日本ではマイナーな四角いスクエアタイプのネジ等にも対応できる。

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また、このビットはナイフ本体の表面・裏面・側面に長いものは1個づつ、短いものは2個づつ収納できるスロットルがあり、この差込口も含めると、最高で7のビットを本体に入れておける。

ロープロファイルな専用ビットは携行には大変便利だが、使いやすさはさすがにちゃんとしたドライバー等には負ける。この点を重視するなら、インパクトドライバー等で使用するフルサイズのドライバービットが使用できるガーバー社のセンタードライブの方が良いだろう。

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⑨ 銃器清掃用クリーニングロッド・ブラシアダプター 

拳銃の銃身や細かな掃除をする時は本体からアダプターを出し、ライフル等の長めの銃身を掃除する時は、本体のネジ穴にロッドを装着して柄とする。正直、銃を所持しても所持していなくても微妙な存在。言うまでもないが、クリーニングロッドは付属していないので、自前の物を用意。

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⑩ C4パンチ 

②で作った導火線と接続した信管を、プラスチック爆弾本体に入れ込む時に使用する穴あけパンチ。こいつでC4等の柔らかそうで案外固い爆発物に穴を開けて、信管を入れる。これも別売りされており、取替ができ、MUT Utility用の銃器分解ツールと入れ替えることも可能。

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⑪ 銅製カーボンスクレーパー 

銃器を扱うものからすると、コレがけっこう使える。撃ちまくったり、使用後清掃をサボったがために、しつこくこびり付いたカーボンを、銃器を極力痛めずに強力に削ぎ落とす。このツールも1000円程度で取替が可能。(930361 CARBON SCRAPER)

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⑫ ハンマー 

ボディの形状から考えると、コレでトンカチとして使えとか、冗談に思えるかもしれないが、かなりガッツリと叩いても問題ない。軍事から日曜大工にしろ、作業をしていると意外とぶっ叩く必要性や細かな作業が面倒になってぶっ叩けばいいんじゃないのかと思えることは多く、このツールはけっこう使う。とは言え、凹凸や突起が多いボディ形状なので、怪我や事故防止の観点からも、グローブや軍手を使うことをオススメする(経験談)。
⑬ カッティングフック 

紐や導線等を引っ掛けて切る時に使用する。形状からガットフックとしては使えず、個人的に存在価値が微妙なツール。レザーマン的には、緊急時にシートベルトとか切ることもできるよ!とのこと。しかも、これも別売り品で取替が可能。(930364 CUTTING HOOK)
⑭ ボルトオーバーライドツール 

ハンマーとカッティングフックの先端部分。ヒドイ弾づまり等を起こして、開放できなくなった銃器のボルトの隙間にコレをねじ込んでムリヤリ開けろというツール。銃を所持してない人には当然不要だし、所持してる人もう~ん・・・っていうツール。
⑮ カラビナ&栓抜き 

どうせまたすぐに使うからちょい引っ掛け!とかでカラビナがあると便利。

ズッシリ専門職向けツール

冒頭でも述べたがけっこう重いツールであり、しかも日常生活に必要ないものがけっこうてんこ盛りである。銃器所持者なら、MUT Utilityの方を買えばいい。ということで、偵察・工兵・爆発物処理班の諸兄の方々は検討してみてはどうであろうか?ただ、クセが強いツールであることは確かなので、一度実物を触ってみることを強く勧める。そもそも、国内では値段が3万円後半とマルチツールとしてはかなり高額だ。(本国の170$も十分高額だが・・・)