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ジャンル:マルチツール・十徳ナイフ
レザーマン社のコンパクトで携行・実用性に富んだ、EDCに最適なミドルサイズマルチツール。しかもカワイイ。
執筆時期:2018年7月
SPECS | 性能諸元
メーカー名(生産国) | LEATHERMAN(アメリカ合衆国) |
全長 | 8.2cm(収納時) |
重量 | 131グラム |
ナイフ刃渡り | 5.77cm |
ナイフ材質 | 420HCステンレススチール |
本体基本材質 | ステンレススチール |
一般価格 | 日本:13500円 | 米国:52.46ドル |
EDCに最適なジュースシリーズの中でもバランスの取れた一品
旅行や外出が多い人や、アウトドア・アクティビティが好きな人にとって、マルチツールの需要は高い。さて、一口にマルチツールと言っても様々な機能やサイズがある。より過酷な環境や、本格的な作業を念頭に入れる場合は、Leatherman MUT EODやWingmanのようなタフでフルサイズなマルチツールが必要だが、彼らは少々重くて荷物としてかさばる。もう少し機能性と携行性の両立が取れたものは無いだろうか?という需要に応えたものが、今回紹介するようなミドルサイズのマルチツールだ。
私も、事務机の傍らに置いてたり、タフで過酷な訓練・海外遠征をする場合はレザーマンのウイングマンを持っていくが、普段の携行品としては大きいし大袈裟だ。仕事柄上マルチツールを使用する機会が多く、ほぼ必需品とは言え、人前や都市部に置いて、大きくてミリタリー色を前面に押し出したマルチツールを取り出すのは、自他ともに精神衛生上よろしくない。と、言うことで以下の選定基準でミドルサイズのマルチツールを購入した。
●極力ポップでかわいさがあり、威圧的な外観でないこと。
●収納時のサイズは10cm以下。
●プライヤーとハサミを備えていること。
●プラスドライバーとマイナスドライバーを備えていること。
例によって様々なメーカーのミドルサイズマルチツールを吟味し、採用に踏み切ったのがLeatherman社のJuice S2だ。
またレザーマンか!と思われるかもしれないが、致し方ない。実用的なプライヤーを備えているマルチツールを作らせれば、レザーマンの右に出る者はいない。
今回購入したJUICE(ジュース)シリーズは、レザーマン社のかわいくて親しみやすいミドルサイズのマルチツールとして、多数のラインナップを揃える。(以下厚みが大きい順)
●JUICE XE6:JUICEシリーズで最も多くのツール(18種類)を備える。2種類のナイフに、ノコギリやヤスリまでてんこ盛り。
●JUICE CS4:いやXE6はやりすぎだわ。ナイフなんて一つでいいしヤスリなんていらんわっていう人向け。(ツール数15種)
●JUICE S2:今回紹介する私の愛用品。CS4からさらにノコギリやキリ等を省いたモデル。(ツール数12種)
●JUICE C2:S2からハサミはいらんけど、コルク抜きは付けといてくれよというワインを嗜む紳士淑女向けモデル。(ツール数12種)
●JUICE CS3:展開するとプライヤーが出てくるレザーマンの伝統を破り、ビクトリノックスのようなシンプルなモデル。ツールはハサミ・コルク抜き・缶切り・栓抜きの4種だけのブレードレス。
●JUICE B2:かと思えばこちらは、直刃ナイフと波刃ナイフのみのナイフパーティーなモデル。
この中から私が採用したのが、バランスの取れたJUICE S2だ。日常・事務的な使用で、ちょっとした外出や旅行でよく使うことを前提としているので、ノコギリやヤスリ等を備えた上位モデルはいらないと判断した。そして、機材等のちょっとした組み立てや調整をすることもあるので、プライヤーやドライバー類は必要だ。
●私が購入したものは、JUICESシリーズでも旧機種になる。とは言え、ツールの種類や機能、形状はほぼ何も変わっていない。ただ色が違うだけだ。現行型のJUICEシリーズは、微妙なツートンカラーになってしまっている。個人的としてはあまり好みじゃない。こちらの旧機種の方が爽やかなオレンジジュースのようで名称と合っている。何よりも少しザラツイた塗装が施されており、ハンドル部の指紋が目立ちにくい。
●収納時。少し残念な点は、左右で厚みが違うことだ。ポップでかわいいデザインのツールなので、厚みは同じにして欲しかった。
●収納すると全長8.2cmのサイズは、手の中にポッと収まる大きさで、携行しやすい。重量も131グラムなので旅の妨げにはならない。
●同社WINGMANとの比較。WINGMANはレザーマンのフルサイズマルチツールの中では少し小さい部類に入り、全長は9.7cm。JUICE S2それよりさらに一回り小さくなる。
TOOLS | 収納ツール・機能一覧
さて、各ツールの解説に入ろう。JUICE S2は12種類のツールが収納されている。
1:ニードルノーズプライヤー
2:レギュラープライヤー
3・4:ワイヤーカッター・ハードワイヤーカッター
5:直刃ナイフ
6:ハサミ
7:缶切り
8:栓抜き
9:プラスドライバー
10~12:マイナスドライバー(極小・小・中)
1:ニードルノーズプライヤー
2:レギュラープライヤー
3・4:ワイヤーカッター・ハードワイヤーカッター
●小ぶりだが、しっかりとした作りのプライヤー。要するにラジオペンチ。私はプライヤー作業ではあまり使わないが、何かを無理やり掴んでねじ切ったり、外す場合によく使用する。荒事作業に意外と使える。
●最大開閉角度は45度くらい。ハードワイヤーカッターはワイヤーカッターの根本にある丸く凹んだ部分。ハードワイヤーカッターからプライヤー先端までの長さは約3.55cm。
●このモデルは、同社のWINGMANのようにプライヤー部にスプリングは搭載されていない。故に、物を掴んでまた広げる際は薬指あたりを中央に入れて完全手動で行わないといけない。物を掴んだまま保持できるという利点はあるが、開閉作業を何度も繰り返して行う場合は少しもたついて手間がかかる。どっちがに良いかは、好みや使用用途に左右されるが、私はスプリングがあり、アシストがかかる方が好きだ。
●ハンドル部は8cm程度と小さいので、あまり強い力はかけにくい。
5:直刃ナイフ
●刃渡り5.79cm(公称値5.77cm)、刃厚は2.2mmの420HCステンレスの直刃ナイフ。シュパッと鋭い切れ味だ。よく旅行や出先でパンや果物を切り分けたりするのに使用する。ただ、ロック機構は無いので思わぬ力が働くとパタンと閉じてしまうので注意。不器用な私はこの鋭利なナイフで3回くらい指を切っており、血の味を覚えさせてしまった。
●片手でのオープンはできないことはない。
●このモデルは、刃体の長さ8cm以下、刃渡りは6cm以下で、刃厚は2.5mm以下、ロック機構も無いので銃刀法には抵触しない(銃砲刀剣類所持等取締法第22条)が、軽犯罪法では正当な理由なく刃物を携行しているだけでアウトなので、私のように職務上刃物の必要性を説明&許可が取れる場合や、法令で携行可能な海外での使用を除き、持ち歩かないように。
→また、お巡りさんによっては知識レベルにバラつきがあるので、刃体と刃渡り(実際に刃が付いてる部分)の区別がごっちゃになっており、軽犯罪法違反で終わる話が銃刀法違反へとレベルアップする事態にもなりかねない。ほら、やっぱり国内でEDC(Every Day Carry:常に持ち歩く物)しないほうがいいでしょ?私も余計なトラブルを避けるためにも、仕事に関係の無いときはお留守番させている。
6:ハサミ
●刃渡りは2.84cm、先端からハンドルまで含めた長さは6.67cmのハサミ。フルサイズクラスの同社WINGMANやWAVEに付属しているハサミよりも長く、ハンドル部の厚みがあり、絶妙なアーチを描いているので使いやすい。スプリングの感触も切れ味も良好で、糸でもスパスパ切れる。マルチツールにおけるハサミは、私にとって使用頻度がトップクラスに高く、採用に至って重要視している部分の一つだ。
→とは言え、WAVEのようにシートベルトでも切れるような頑丈なハサミというわけでも、同社STYLE CSやMICRAのようにハサミが主役のマルチツールほどの使い勝手の良さではない。
●欠点は、このハサミを取り出す際に、覆いかぶさるように収納されている缶切りをわざわざ開かないとならないところだ。
7:缶切り
8:栓抜き
●メーカー問わずアウトドアアクティビティ向けマルチツールの定番ツール。国内で使用することは殆ど無くなったが、海外に行った際に現地でしか無い美味しい瓶飲料を飲みたい時には無いと困る。また、海外産の缶詰は我が国のようにプルタブが付いていないタイプもまだまだ多い。
●このツールが唯一、片手でのオープンが簡単にできる。他はナイフを除いてできない。
9:プラスドライバー
●コンパクトさを重視したマルチツールでは、ぺちゃんこに潰れたようなプラスドライバー(Flat Phillips Screwdriver)が多いが、S2にはちゃんとしたプラスドライバーが付いている。当然、ネジへの食いつきもこちらの方が断然良いのでけっこう気に入っている。当然幅が広いので、プラスドライバー収納側にはキーリング以外は何も無いが。
10~12:マイナスドライバー(極小・小・中)
●このマルチツール、マイナスドライバーが3つも付いている!極小(先端幅1.9mm)、小(先端幅3.4mm)、中(先端幅6.2mm)の3種類だ。中クラスのものは、よくスクレイパー代わりに使っている。できれば、マイナスドライバーをこんなにコレクションするくらいなら、ひとつくらいキリやパッケージオープナー、ノコギリ辺りに変更してほしいのだが…どうだろうか?
●このツールを親指の爪で取り出そうとすると、ペコンと勢いよく出て親指を傷つけやすいので注意。
その他の選択肢
●このJUICE S2より小さいのがいいけど、Micraよりもしっかりしてて、プライヤー付きがいい!という方は、同社Spuirt(スクォート) PS4がいいだろう。収納時の全長は57.3mmと一回り小さい。私もJUICE S2とどっちにしようか最後まで迷ったが、全体的な使い心地としっかりとしたハサミやドライバー群が付いているということで採用は見送った。
●では他社の場合はどうだろうか?同じくマルチツール強豪メーカーである、Gerber社(ガーバー)とVictorinox社(ビクトリノックス)の同クラスのものを選定してみた。これらも私の採用候補に上がったものだ。
・Gerber DIMEシリーズ:通称ダイム。格納時サイズは7cm。小型ながら、パッケージオープナーや爪楊枝まで備え、日常使いにも良い。
・Gerber SUSPENSION MULTI PLIER:通称サスペンションと呼ばれているシリーズ。格納時サイズは8.9cm。プライヤー以外の全てのツールを閉じたままで取り出せるのは良い。刃物も、ハサミやナイフの他に波刃、ノコギリまで完備。ナイフは片手で展開でき、ロック機構もあるので、少しタフなシーンでも活躍できる。少し大きくなってもいいからしっかり刃物を使いたい方はコチラを。
→ガーバー社の製品はダイムが21ドル、サスペンションが38ドルと、値段が安いという利点もある。
・Victorinox Evolution S557:格納時サイズは8.5cm。ビクトリノックスのレンチを備えたモデル。レンチはM3~M5と可変型。ただ、その形状や展開から、レザーマン製品のように使い勝手の良いものではなく、力を入れにくい。レザーマン製品のようにいちいちプライヤーを展開させてツールを使用しなくても良いが、厚みが2.8cmある。
●最終的に私の使用用途では、JUICE S2を選んで正解だった。しっかりとしたプライヤーで釘や異物を引っこ抜いたり、舐めやすいプラスネジをしっかりと回してくれるプラスドライバー、包帯やテープをサクサクと切ってくれる使いやすいハサミ、異国の美味しくて珍しい果物やパンをサクッと切ってくれるナイフで楽しく旅や仕事ができている。私の頼もしく便利なEDCアイテムだ。