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ジャンル:ウインドウクラッシャー・エマージェンシーツール

SOCP ダガーシリーズのヒットに気を良くしたベンチメイド社が、救命救急や緊急時用のバリエーションとして作ったのがこのSOCP RESCUE TOOLである。SOCPシリーズの特徴的な外見と利点をそのまま、人命を守ることに利用したツールである。

SPECS | 性能諸元

 メーカー(国) BENCHMADE(アメリカ合衆国)
全長 17.15cm
重量 53.29グラム
ナイフ材質 440C ステンレス鋼 (58-60HRC)
 価格 単体:90ドル
トレーナーとのセット:130ドル

 

セーフティでもセキュリティでも “護ります”

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※写真は左からSOCP SPEAR POINT、TRAINER、RESCUE TOOL。

先ほど、コレは救命救急や緊急脱出用のツールだと書いたが、それ以外にも護身用としての武器の側面も持ち合わせている。SOCPシリーズの確実に手にグリップするリング、隠し持てるシース(鞘)と言った特徴はそのままに、先端にはナイフの代わりにカーバイド(炭化カルシウム)のウインドウブレーカーと、ガットフックを備えている。わざわざ、格闘訓練用のトレーナー(写真中央の赤いやつ)とのセット販売もしているくらいだ。

 

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表面の全体的な質感は、コーティングはマットに抑えつつツルツルとした質感だ。ただ、裏面は先端は表面と同じだが、上部は石のような少しザラつきのある質感にしている。

 

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先端はカーバイドのウインドウクラッシャーとなっており、車や家屋のガラスを割ることを目的としている他、ここで相手を突いて戦えというクボタンのような護身目的も兼ねている。たとえ頭部では無くても、こんなので殴られるとたまらない。

 

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ウインドウブレーカーの上部には、ガットフックが設置されている。救命救急時に皮膚を傷つけずに、衣服やシートベルトを割いたりといった他、狩猟での皮剥ぎにも使えそうだ。スっぽ抜け防止に指をかけるリングもあるので、大変使いやすい。このガットフックはなかなか切れ味がよく、紙や草、布や紐が気持ちいいくらいにスースーと切れてくれる。あまり切れ味が良くなかったSPEAR POINTもこれくらい切れてくれればよかったのだが。

 

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中段付近には、SPEAR POINT同様にセレーションが設けられており、逆手のみならず順手でもグリップできるようになっている。

 

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グリップ部分はSOCPシリーズ共通である。欧米人向けなので、手の小さいアジア人にはあまりフィットしない。

 

 

 

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指を入れるリング部分は凹みがある。これは救命救急等で使用する、酸素ボンベのレンチとしての機能を持っている。とは言え、この凹みのお陰でグリップ感は悪くなっている。

 

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シース(鞘)も共通で、タンカラーとブラックの2種類が選べる。隠し持つことを考えた良いシースだ。詳しくはSPEAR POINTのページを見てもらいたい。

このツール、救命救急用としてはなかなか良いかもしれない。この手の救命救急ツールは、携帯性を重視したものが多く、グリップ等があまりよくなく、使用するのが少々難儀な製品が多い。SOCP RESCUE TOOLは、元のSOCPダガーの形としての完成度が高いので、道具として使いやすい。普段はロープロファイルで邪魔にならず、使い勝手の良いシースは様々な場所に引っ掛けたり装備できる。指をかけるリングのおかげで、手が血や油、泥でベッタリと汚れていようが、力が入らなくても滑りにくく、扱いやすい。

ではベンチメイド社がオススメするように護身用として使用するのはどうか?やめておいたほうがいいだろう。

ウインドウクラッシャーは頭部に命中すればヘッドクラッシャーになり、その他の部位でも、皮膚は貫通するし、骨や内臓に傷害を与える。それに、ガットフックを備えていることから、下手に振り回せば、人間の皮剥ぎショーになってしまう。レスリーサルウェポン(低致死性武器)として考えれば、微妙なラインだ。

そして、金属むき出しの本体に加え、小柄なアジア人の手に合わないグリップ、O2バルブ用のリング上部の凹みが相まって、特に打撃や突きと言った動作を行った際に、ユーザーの手を傷つけてしまう。試しに私は布を巻いた木に、一連の動作をしてみて、手がズタズタになりかけたので間違いない・・・。まぁ、そもそもの問題として、我が国ではこんなものを護身用としてでなくとも、持ち歩いている段階で軽犯罪法に抵触する恐れがあるし、こんなツールで武力事態を回避できるのなら、その人はジェイソン・ボーンかガンジーだろう。

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