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ジャンル:ブーツ、靴

ミリタリーブーツで有名なベイツ社の多機能インソールである「ICS」。これが初めて搭載されたブーツがこのDELTA-8(旧型:Side Zip)である。

SPECS | 性能諸元

メーカー名・国(メーカー国・生産国) BATES (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
販売サイズ USAサイズ7~15(日本サイズ換算25.0~33.0)
材質 スエード+1680デニールナイロン
カラー フォリッジグリーン、ブラック、コヨーテブラウン
価格 (購入価格) 134.95ドル (2008年 国内通販にて19000円)

ユニークな切り替え式の中敷きを搭載したブーツ

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ベイツは全米屈指の老舗ブーツメーカーであるウルヴァリン社の子会社だ。同じくタクティカルブーツや登山靴で有名な「メレル」も傘下に入っている。ベイツ社は、米軍にも数多くのフットウェアを納品しており、その信頼性の高さが伺える。今回は、そんなベイツ社の中でも着脱が容易なサイドジッパーと画期的なインソールを搭載した「DELTA-8」を紹介しよう。実はこの靴は、私が初めて購入したミリタリー・タクティカルブーツだ。それまでは、靴なぞ何を履いても同じだと思っていた。本製品を購入したのも、フォリッジグリーンカラーとのデザインの良さと、快適そうなサイドジッパーに何やら画期的なインソールを使用しているというので購入した、言わば好奇心での入手だ。

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全体のディテールを見てみよう。購入から9年近くが経過しており、ところどころで劣化が出てきているが、荒々しく使ってきた割にはまだまだ使用できそうだ。色はフォリッジグリーンを選んだ。ほとんど灰色に近い。靴本体はスエードとナイロンとの複合素材で出来ている。スエードは、子ヤギ等の動物の革の裏地を使用した、靴によく使用されている素材だ。少々の汚れだとサッとひとふきで取りやすく、基本的にはブラッシングだけで維持しやすい。ただ、油汚れ等の面倒な汚れには弱く、シミ等ができやすい点は留意してほしい。とは言え、野山を駆け巡ったり、格闘やモータースポーツ等いろいろなことに使用して汚してきたが、私は数ヶ月に一回程度軽くブラッシングしたり、派手に汚してもスエード用のクリーニング剤でササッと汚れを拭き取った程度だ。素材が何であれ、この程度の劣化ですんでいるので完成度の高さがおわかりいただけるだろう。ちなみに、このDELTAシリーズのより防水性を向上させたゴアテックス版はスエードではなく革になっている。また、一回りブーツの長さを短くしたミドルカット版の「DELTA-6」もあるので、各人の使用環境に合わせたブーツを選ぶことができる。(DELTA-8だの6だのは、ブーツの高さのインチ数を表している)

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靴底である。かかと部分を中心に流石にチビては来ているが、かと言って滑って困るとかグリッピングの低下はあまり感じられない。賞賛に値するほど優秀な靴底というほどではないが、耐久性に優れた良いものではある。ツルツルの床が、雨等で濡れた時に、靴がよくキュッキュッキュッキュッと子供靴みたいに嫌な音を立てることがあるが、DELTA-8はあまりその点は気にならない。雨天時の室内戦闘も静かに行動可能だ。また、靴底と靴本体はセメント製法と呼ばれる縫い付けずに、強力な糊で接着する製法を用いており、水が侵入しにくい工夫がしてある。セメント製法は、安い靴だと経年により、無残に靴底がベロンとうげることがあるのだが、本製品からは9年たった今もそんな様子は微塵も感じさせない。

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靴の着脱は、サイドジッパーで容易にできるようになっている。ジッパーは言うまでもなく、YKKだ。サッと上まであげて、ベルクロ付きのカバーでジッパーの持ち手を保護する工夫もされており、耐久性にも一役買っている。とは言え、どこまでいってもジッパータイプのブーツは、あまりラフな扱いには向かない。使用して4年目くらいの頃、市街地での激しい訓練中にパリッと壊れてしまった。修理に出したのだが、一度壊れるとジッパーとしての機能の復活は難しい。以来、気軽なお出かけ用にジッパー無しで使用している。ハイカットのブーツであり、作りが良いので、激しい運動をしない限りは脱げたり違和感や不安定性を感じることはない。

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さてこのブーツ、というよりベイツ社のブーツの目玉が、この「ICSIndividual Comfort System)」というインソール(中敷き)である。汚くて申し訳ない。ベイツ社のミドルランク以上の靴やブーツに搭載されており、路面や個々人の足の状況に合わせて、クッション性能を切り替えることができる。まるで車の走行モードやサスペンションを切り替えれるシステムのようである。男の子はこういうのに弱い。中敷きの裏を見てみると、機械のダイヤルのようなジェルがかかとに付いている。このダイヤルで大きくわけて4つのモードに切り替えが可能で、

FFirm):クッション性能と推進・反発力の両立させたモード。スムーズな歩行を助ける万能型。

CCushion):クッション・衝撃吸収能力に重点を置いたモード。ジャンプを多用したり、硬い路面等で効果を発揮する。

OOutward):足の外側への傾きを防ぐモード。かかとが外側に傾いている人や、足の障害の状況に合わせて使用する。

IInward):足の内側への傾きを防ぐモード。かかとが内側に傾いている人や、足の障害の状況に合わせて使用する。

となっている。普段の使用は、FFirm)かCCushion)のモードで良い。人によってはCCushion)だと、足元が若干フワフワと違和感を感じるかもしれないので、好みと路面の状況に合わせて使用したい。

運動学や、スポーツ分野の用語で、走っている時の着地→蹴り出しまでの動きを「プロネーション」と言う。人によって、このプロネーションが、外側に傾いていたり、内側に傾いていたりする。これは、個癖や骨折・捻挫等の障害、体格等で変わってくる。

また、X脚の場合はかかとが内側に傾くオーバープロネーションに、O脚の場合は逆にかかとが外側に傾くアンダープロネーション(サビネーション)になる傾向がある。オーバープロネーションの場合はIInward)に、アンダープロネーションの場合はOOutward)にセットすると良いだろう。各種4つのモード変更で満足がいかない場合は、それぞれのモード毎に間をとることができる。とは言え、自分の足の特性を自分で把握するのは難しいので、スポーツショップや靴屋、医療機関等で調べてもらうのをオススメする。

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中敷きの前部には、衝撃吸収のジェルパッドを備え、指やアーチの負担を抑えてくれる。中敷きそのものは全体的に柔らかいタイプで、かかと部分はICSのおかげで1センチ近く厚みがある。そのため、この独特のインソールは、他の靴に対して使いまわすのは難しい。好みにわかれるが、クッション性能に優れた良い中敷きなので、他の靴に流用できないのは少し残念だ。とは言え、この厚みのおかげで、長年使用してもヘタレたりクッション性能が損なわれることは少ない。

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靴サイズはタンの部分にアメリカ・イギリス・ユーロサイズで表記されている。今回はUSサイズの「7(インチ)」を購入した。日本サイズに換算すると25センチだ。私は、普段25.5~26センチの靴を履くが、海外製の靴は若干小さめを買うと良いと聞いたので。そのアドバイス通り、このサイズちょうどよいか、気持ち大きいかな?という具合であった。できることならば、実店舗でサイズごとに履き比べての購入をすることをオススメする。

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ジッパー部分の裏側は、汚れや水の侵入を防ぐためのガードが施されている。

アーバンタクティカルブーツ

この手の長いブーツは、ジッパーが付いていると大変便利だ。特に、室内は土足禁止の分化がある日本人だとより実感できるだろう。だが問題は耐久性だ。どうしても耐久性は落ちてしまう。これは、ダナーであろうが、5.11、リーボック、アンダーアーマーであろうが同じだ。ジッパーが壊れると、靴のみならず、服でもカバンでも本来の性能を大幅に損なってしまう。ハードな使用が求められる、ミリタリーやタクティカルの現場だと尚更である。故に、ラフな扱いや、山間部での使用は控えたほうが良い。また、使用する際も、靴紐をあまり強く締め付けると、その分ジッパーにかかる負担や圧力は強まるので、少しゆるめに結ぶのが良い。こういった点からも、市街地での警備活動等での使用が良いだろう。

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