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ジャンル:ライフルスコープ、ショートスコープ

実銃対応であり、クリアなレンズながら、国内で15000円前後とトイガン用スコープ並の低価格で売られているTAC Vector Optics社の「Forester 1-5×24」。破格の実銃用ショートスコープのポテンシャルを探ってみたい。

執筆時期:2018年3月

※本製品を提供してくださった武政様に感謝致します。また、本製品は武政様が運営しているネット店舗「R&K」にて購入可能です。

https://store.shopping.yahoo.co.jp/ryoji5677/

SPECS|性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) TAC Vector Optics(中華人民共和国)
全長 26.5cm
重量 415グラム
対物レンズ径 24mm
倍率 1倍~5倍
視野(FOV) 1倍:22.3m~6倍:6m / 100m
アイリリーフ 115mm~95mm
レティクル(SFP:第二焦点面) VFD-2
イルミネーター 赤色LED 1~11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
防水性能 3m
定価(国内価格) 99ドル(2018年現在:15000円前後)

トイガン向け価格帯の実銃用ショートスコープ

この手の趣味や業界に手を出してまず思うのは、周辺機器や装備品全てが思いの外お高いということだろう。銃器、装備品、衣服、周辺機器を揃えていくうちに、満を持して待機していた福沢諭吉がみるみるうちに減り、絶滅危惧種となっていく。トイガン業界ですら、ちょっとこだわっただけでも想像以上にお金が消えていく。これが実銃となれば言うまでもない。特に我が国では、まず銃の所持許可を得る段階でお金と途方もない時間が流れ消えていく。


その最たるものがまさに光学機器だ。カメラを趣味にしている人は別として、銃器用の光学機器に手を出すとその値段に驚くことは多い。特にスコープは、ヘタをすると銃本体どころか車すら買えてしまうような値段帯の製品も珍しくない。もちろんこの世界もピンキリだ。実銃向け光学機器とは言え安いモノも存在する。そのうちの一つが、今回紹介するTAC Vector Optics社の「Forester 1-5×24」だ。

TAC Vector Optics社は中国の光学照準器メーカーで、どこかで見たことがあるような光学照準器を中心に販売している。個人的にはSVDの照準器を使いやすくアレンジして売っているのが気になる。製品はどれも50~350ドル前後の低価格帯なのがウリだ。本製品である「Forester 1-5×24」の価格も米国で99ドル、日本国内でも15000円前後で購入できるという、実銃向け光学照準器とは思えない価格だ。


全体を見てみよう。

接眼部のチューブがニュルっと細長くなっているのが特徴的だ。

ボディの質感は少しザラッとしたコーティングが施されている。ボディの材質は6061 T6アルミニウムで、この手の照準器に使われる素材としては標準的だ。


全長は265mm、重量は415グラムで、他社有名所の1-5倍率のスコープと比べても比較的軽量でコンパクトな設計となっている。

参考までに他社製品と比較すると、「Burris XTRⅡ 1-5×24」(287mm / 598g)、「MINOX ZE5.2 1-5×24」(285mm / 480g)、「STEINER M5Xi Military 1-5×24」(294mm / 601g)

このスコープの立ち位置は、近~中距離での狩猟・競技向けという設計となっているようだ。


接眼部

パワーダイヤルは突起の無いナーリングのみのタイプだが、程よいテンションで回すことができる。

倍率表示はチューブに開いた小窓から数字が覗いている。パワーダイヤルを回転させるとそれに連動して数字もコロコロと変わる。表示は「1・1.5・2・2.5・3・4・5」と表示される。今現在の倍率がわかりやすくユニークな設計だが、チリやゴミが入るとパワーダイヤルの回転にも干渉してしまう。

パララックスは手持ちの説明書では50ヤードに設定されているが、製品ホームページでは100ヤードとある。仕様が変更されたのか?


接眼レンズ部

グリーン系のマルチコートレンズで、対物側も同様だ。12枚のレンズから構成される。

接眼部は少し尻すぼっていくような形状になっている。

視度調整ダイヤルもパワーダイヤル同様、スムーズに回すことができる。

接眼部鏡筒には、目を保護する目的のアイカップやラバーリング等は付いていないタイプ。


ウインテージ、エレベーションノブはアルミ製の蓋でカバーされているタイプ。ネジの溝にOリングを入れているタイプではなく、Oリングの土台にネジをして防水処置をしているタイプだ。


蓋を回して取るとウインテージとエレベーションノブが姿をあらわす。1クリックでの移動量は1/2MOAで、100m先で約1.38cmの移動量となる。最大移動量は60MOA。

ノブのクリック感はカチッカチッカチッと標準的なスコープと同じ。ただ、ごくまれにクリック感が不透明になったりテンションが変わったりすることが散見された。

カバーのネジ溝はあまり良い精度ではないのでザラつきがある。グリスを少量塗るとスムーズになる。


ノブ頂点のマイナスネジを取ると、台紙が取れる。これでゼロイン後に任意の位置に台紙に書かれているゼロに合わすことができるが、どんだけネジを締めても射撃の反動等でいつの間にか動いているといったことが起きた。あまり当てにしないほうがいい。


イルミネーションノブ

電池はお馴染みのCR2030コイン電池を使用。

イルミネーションは1~11段階で光量切り替えが可能。イルミネーションノブは程よいテンションで操作がしやすい。

イルミネーションは射撃の反動(5.56×45mm弾で50発ほど試射)で、一回だけ点灯不良を起こした。一旦OFFにして、再び灯すと次からは問題なかった。


パッケージと付属品

Foresterシリーズ共通の簡易的な説明書、レンズカバー、レンズクロスとここまでは普通のスコープと同じだが、さらにマウントリングとオマケであろうボトルオープナー(!?)まで付属する。


なんとマウントリングまで付いていてこのお値段とは!と思うかもしれないが、このように小さな箱にネジも工具も一緒に雑にゴロんと詰め込まれている。案の定、箱も輸送途中で破れていた。


マウントリングは狩猟用や狙撃銃に付けるようなローマウントタイプのもので、レールから9mm上の位置に設置できる。

マウントリングは30mmウェーバーマウント用で、別途注文すればこのマウントリングを競技用の銃器によく見られる、ダブテールマウント(Dovetail mount)用に変更することも可能だ。

マウントリングの精度そのものはやはりそこまで良いものではない。少しサビや傷は最初から付いているし、工作精度も滑らかとは言えない。まぁオマケ程度と考えるのが無難だろう。実銃射撃向けではないが、トイガン・サバゲー用途だと使えそうだ

髪の毛のように細いレティクル| VFD-2 Reticle


※画像クリックで拡大可

距離100mでACU迷彩の上衣に照準。薄曇りの中での撮影で、雲から太陽が覗いたり隠れたりで明るさがコロコロ変わっているのでご了承を。

まずは1倍から。とてもこの値段帯からは考えられないほどの透明感のあるレンズだ。若干低い色温度で映し出してくれる。

レンズの縁や鏡筒内部もあまり映らず覗くことができる。この点は今まで紹介したBurris MTAC 1-4×24Vortex Strike Eagle 1-8×24よりも優れており、視界の妨げになりにくい。低倍率特有の歪みも比較的抑えられており、場合によっては5~6万円台のスコープにも負けないようなクオリティーのレンズだ。

レティクルはまるで髪の毛のように細く、中央にドットがあり、左右と下の外端が若干太くなっている。この手のレティクルは近~中距離向けの狩猟用スコープによく見られる。

レティクルが太かったり、余計な表示や機能がゴチャゴチャして邪魔くさいといったことが無いのが利点だ。クリアなレンズと相まって、射手はターゲットのみに集中することができる。ただ、かなり細いレティクルなので、Forester(森の住人)という名前の割には、暗がりや深緑の森や林の中ではレティクルを一瞬見失いやすい。そのため、速射やCQB戦闘といったシーンで使うことは避けたほうがいい。

イルミネーションは薄曇りという天候ではあったが、最大光量でもあまり明るく灯らない。直射日光下では使い物にはならない。かといって最低光量は少し明るく、暗闇で使用するにはもうほんの気持ち暗く設定できればよかった。イルミネーションの明かりは対物レンズ側からある程度光っているのが確認できるので、夜間での戦闘ではあまり使わない方がいい。

このイルミネーションが日中でも使用できるレベルだと、速射が苦手な細いレティクルを補うことができるのだが残念だ。薄暗い室内でのCQB戦闘では使いやすい。


※画像クリックで拡大可

2.5倍と5倍率

倍率が高くなるにつれ、どうしても鏡筒内部も視界に入ってくる。

カメラのレンズではあまり再現できなかったが、倍率が高くなるにつれ、少しだけレンズの鮮明度が落ち、漫画の集中線が気持ち出て来るような写りになる。逆光時の余計な反射やフレアもでやすくなる。

低倍率時のクオリティーに注力したスコープのようだ。とは言え、15000円のスコープとは思えない高いレンズ品質を持つスコープだ。中心点もクロスヘアではなく、ドットのみで見やすい。これならば、100m先に捉えた野ウサギも今晩の食卓へ並べることができるだろう。

Foresterシリーズは、他にも2-10×40、3-15×50と言った感じでより高倍率のモデルがある。どのモデルもレティクルはほぼ同じだ。


アイリリーフは公称値よりも長めだ。特に1倍率ではアイリリーフもアイリリーフ範囲も長く、約6.5cmある。アイボックスの範囲は至って普通だが、ある程度無理な姿勢でも覗きやすい。


本スコープは、30~300mでの射撃をメインとして作られたスコープだ。付属しているマウントやレティクル形状を見てもわかるように、狩猟や射撃競技用途として作られたスコープである。

故にCQBといった戦闘向けではないが、ターゲットに注力を要したい射撃には向いている。狩猟や射撃競技の他には、サバイバルゲームだと、~90年代の少し古い銃器や、ボルトアクションライフルにこのスコープを付けても面白そうだ。

実銃射撃用のスコープとしてはなかなかのコストパフォーマンスだ。5.56mm弾での射撃を試したが、イルミネーションが一瞬点灯不良になったくらいで、ゼロインが狂ったり他が破損や機能不全を起こすことはなかった。実銃射撃の場合、付属のマウントリングはもっと良いものに変えた方がいいが。とはいえ、この品質・この値段帯で「使える」実銃射撃向けのスコープはなかなか無い。

トイガン向けと考えても悪くない一品ではある。このジャンルでのライバル機種は、ノーベルアームズ社のTAC ONE 12424IR、SⅡS社のPRE-02 ショートズーム・ハイブリドット 1-5X24 PREDATOR ELがあるだろう。値段帯も同じだ。品質に関しては、他機種はざっと覗いて触った限りだが、レンズに関してはForesterの方が上だ。また、細部の品質もForesterが勝っている部分が多い。Foresterに関して、品質のバラツキがどうなるかは、あまり情報が無いのでわからない。

レンズの質で選ぶならForester、CQBやアタッカー寄りのスナイパーをしたいのであればTAC ONE 12424IRやPRE-02が良いだろう。

※本製品を提供してくださった武政様に感謝致します。また、本製品は武政様が運営しているネット店舗「R&K」にて購入可能です。

https://store.shopping.yahoo.co.jp/ryoji5677/