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ジャンル:フラッシュライト・懐中電灯

シュアファイヤー社のコンパクトな「守護者」、それが今回紹介するE1Dだ。これでもう闇夜も怖くない・・・?

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー及び製造国) SUREFIRE (アメリカ合衆国)
全長 10.8cm
重量 88グラム(バッテリー除く)
ボディ素材 航空機アルミボディ
光量(点灯時間) High:300ルーメン(1.3時間)
Low:5ルーメン(47時間)

 

※Highの点灯時間はタクティカル用途として使える50ルーメンに低下するまでの時間

使用電池 CR123Aリチウム電池 1個
価格 アメリカ:240ドル

国内:33000 ~ 39000円台

手の中の守護者

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シュアファイアー社のEシリーズ(Executive)は、スリムなボディで、日々の業務や日常において携行することを目的として作られたシリーズだ。その中でもE2Dは、Eシリーズのスリムさを維持しながら、語尾のDefenderを意味する文字の如く、護身目的にストライクベゼル等を備えたものだ。さすがはアメリカと言うべきか、このモデルはなかなか人気のモデルで、今日に至るまで何度もアップデートを繰り返しながら販売されている。今回レビューするE1D(E1DL-A)は、そのE2Dをそのまま短くしたモデルだ。

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頭とお尻に生えているストライクベゼルが目立つ。小さな子犬だが、ヘタに近寄ると噛みつきそうな出で立ちだ。これはちゃんとしたストライクベゼルなので、他のシリーズにあるような誤点灯防止用の丸く波立ったヘッドとは違って、エッジがある。衣服やカバンによっては傷つけてしまう恐れがあるので注意したい。チビだが、これで殴られたらイテッじゃすまないだろう。ボディのナーリング(すべり止め)は、指で触ると引っかかりを感じる。グローブを使用した際にもガッチリと掴むことができるだろう。クリップは、この手のモデルの始まりとも言えるE1Bからの前からでも後ろかでも使用できるクリップだ。現在のSUREFIREではお馴染みだ。利便性の高いクリップではあるが、クリップに対する過信は禁物だ。私はこのクリップで、過去にE1Bを消失させたことがある・・・。

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お尻のスイッチ部分。E2D同様、ここにもストライクが施されている。これはライト本体を逆さに立てらせることができ、簡易的なランタンとしても使える。また、スイッチの保護や誤点灯防止にも一役買っている。とは言え、このおかげでスイッチは少し押しにくい。タクティカルライト独特の持ち方である注射器持ちも少々やりにくい。軽量化兼ストラップを通す穴があいている。

スイッチは、半押しで押している間だけの間欠点灯、全押しで常時点灯となる。どちらも、最初の1発目は300ルーメンのHighモードで点灯し、2秒以内のボタン操作でLoモードで点灯するというプログラムだ。

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写真は他メーカー(G&P T-1、HDS T1B-200)の1セルライトと並べている。全長は10.8cmと、CR123Aリチウム電池1個仕様のライトとしては、そこまでコンパクトというわけではない。

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とは言え、この長さは本ライトの護身目的という性質上必要なもので、これ以上短いと、格闘用のストライクベゼルを設けた意味が手の中に隠れてしまうだろう。大きさとしては使いやすいサイズだ。とは言え、お尻にまでストライクを設け、スイッチを覆っている点に関しては、ベゼルが尖っていることもあり少し使いにくさはある。正直、ライトのお尻で格闘させるくらいなら、ここだけはもう少し丸みのある設計にして欲しかった。この点に関してはE2Dも同様に思う。

ちなみに、ストライクベゼルが付いているとは言え、ヘッド径は他のエグゼクティブシリーズ同様、1.125インチ(28.5mm)なので、フィルター等の様々なオプションが使用できる。

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そのような意味から、同社の同じEシリーズである、EB1の方が私は好みだ(上写真のライト)。EB1は、タクティカルなバックアップ用ライトとしてかつて同社から発売されていた、E1B(ややこしい・・・)の後継機で、LED懐中電灯黎明期の頃から根強い人気のあったSUREFIRE L1と合体させたようなライトだ。このライトは、本製品であるE1D(だんだん似たような単語ばかりでごっちゃになりそうだ・・・)から、牙を抜いたようなマイルドなデザインとなっている。この機種は、スイッチシステムを2種類から選ぶことができ、一つは本製品と同じで、もう一つは、旧L16Pではお馴染みの、スイッチを浅く締め込んだ状態で、浅く押してLoの間欠点灯、深く押し込んでHighの間欠点灯、スイッチを深く締め込んで、Loの常時点灯、更に深く締め込んでHighの常時点灯ができる。実は、これはタクティカルの観点から見てもE1Dよりも都合が良いことが多い。パッパッと点灯して消灯してを繰り返すことが多い、閉所や屋内でのクリアリングといった、シーンでは、こちらのスイッチシステムの方がやりやすい。E1Dのような素早くオンとオフを繰り返してモードを変更するシステムだと、もはや役立たずになりかねない。できれば、本製品であるE1Dもスイッチを用途によって選べるオプションが欲しかった。

照射比較 │ 小型ながら優秀なTIRが闇夜を照らす

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SUREFIRE自慢のレンズであるTIR(Total Internal Reflection)を搭載している。この、主に上位機種やプロ向けの機種に搭載されている特殊な集光レンズは、タクティカル用途としては、実によく計算されて設計したレンズだと感じる。それでは他社のライトと比較しながらその照射を見てみよう。

今回比較に使用したライトは以下の通り

○HDS T1B-200(CR123Aリチウム電池×1個、最大220ルーメン)

○SUREFIRE E1D(本製品。CR123Aリチウム電池×1個、最大300ルーメン)

○SUREFIRE X300U-A (CR123Aリチウム電池×1個、最大500ルーメン)

○WOLF EYES Defender-2 D26 XM-L (CR123Aリチウム電池×2個 、最大420ルーメン)

以上を、いつもの公園で80m先に吊るしたACU迷彩上着を照射。奥の森までは150m

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E1Dの照射パターンは、飛び出たストライクベゼルによって周辺が花形のパターンを描き、範囲が狭くなってはいるが、TIRレンズの、周辺光も幅広く確保しながらも、遠距離までグンと飛ばしてくれる優れた設計がわかる。それは、同じTIRである同社のX300を見てもわかるだろう。

より細かく見ると、自分の近場である周辺光は、暗順応を極力阻害しないように、かと言って何も見えないという状況を作らないように、幅広く暗めに照らしている。そして、遠距離は胸ポケットにポンっと入るライトとは思えないほどしっかりと飛んでいる。LEDの色温度はSurefireお馴染みのニュートラルホワイト寄りの、目標が見やすい色だ。私は、使用目的の相違から、基本的にはSUREFIREのライトはあまり使用しないが、このTIRレンズは実に羨ましい。

民のための守護者

先程のシンプルではあるが、素早いレスポンスは対応できないスイッチシステムの観点から考えると、このライトは誰の守護者として作られたライトであろうか?

あくまで、私の考えに過ぎないが、暗所でのライトを用いた戦闘テクニックを知らない、純粋な民間向けと考えるのが良いかもしれない。とは言え、このような剣呑なライトをそんな人達が買うかどうかは微妙であろう。アメリカ本国では安くても200ドル、日本国内だと、2万円前半になることはまずない。小さいが実に高価なライトだ。また、このようなあからさまなストライクベゼルが付いたライトは、警察の判断によっては軽犯罪法に当たる可能性がある。現に私は、同社E2Dではあるが、所持していてしょっ引かれた人を知っている。危機管理の様々な観点からも、これを携帯して街を練り歩くのはやめておいたほうがいいだろう。

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