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ジャンル:充電式懐中電灯

SUREFIRE社初の18650充電池を使用した充電式フラッシュライト。ピースキーパーと言う名前からは、エンニオ・モリコーネの音楽と共にアメリカ西部の香りがしてきそうだが、果たしてその真価はいかに。

SPECS | 性能諸元

メーカー名(生産国) SUREFIRE(アメリカ合衆国)
 全長  13.97cm
 太さ  ヘッド部:約3.48cm(1.37インチ) | ボディ部:2.54cm(1インチ)
 重量  約175グラム(付属18650充電池含む)
 使用電池 18650 リチウムイオン充電池 または CR123Aリチウム電池2個
光量 / 点灯時間 / 光源  HIGHモード:600ルーメン / 1.75時間 | LOWモード:15ルーメン / 46時間 (共に付属18650充電池を使用)/ Cree XM-L2
 ↑HIGHは明るさが50ルーメンに低下するまでのタクティカルランタイム。LOWはANSI(米国国家規格協会) FL1標準規格
 標準価格  250ドル (購入価格:220ドル)

充電池を嫌っていたSUREFIREが出した初の18650フラッシュライト

一昔前、SUREFIREのフラッシュライトは、その購入への敷居が高いものだった。フラッシュライトとは思えぬ本体価格もさることながら、基本的には一つ500円前後するCR123Aリチウム電池を使い捨てながら使って行かなくてはならないものだからだ。特に今のLEDではなく、フィラメント球だった頃は点灯時間も数十分程度といった感じが当たり前だったので、より軽い趣味程度で買えたものではなかっただろう。SUREFIREは特に、自社製品がLED化されても、リチウムイオン充電池に対応した製品はなかなか出さなかった。リチウムイオン充電池は、容量や維持のしやすさこそ従来の充電池よりはしやすいものの、事故が起きた場合、大きな発火や破裂を起こしやすい。信頼性が第一で、軍や警察関係の激しい環境で使われる自社の製品のことを考えるとリチウムイオン電池は避けたかったのだろう。製品によっては、リチウムイオン電池を入れると警告される機種もあるくらいだ。(E1B等)

そのSUREFIREも、LED化、Li-ion充電池の普及、そして安価でしかも性能が高い中国製のフラッシュライトに押され、近年のSUREFIREは、一昔前では考えれなかった製品が多数出ている。その一つが、18650充電池を使用したP1R Peacekeaperである。

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充電器付いて〼

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今回は、まず付属品から見ていこう。付属バッテリーは、いつものSF123A2個ではなく、18650のリチウムイオン充電池である。18650とは、直径18mm・全長65.0mmのサイズのリチウムイオン電池のことを言う。CR123Aリチウム電池2個を直列につないだものよりも若干太いので、CR123A×2個使用するライトでは入らない場合もある(その場合は直径が少し小さい17670リチウムイオン電池がだいたい入る)。この18650は、容量大きく、尚且つCR123A×2個も同時に使えることが多いので、国外メーカーの懐中電灯ではポピュラーな充電池だ。また、その他家電やノートパソコン等を分解してみると、バッテリー部分にこの18650がドッサリ繋がれているということも多く、多岐に渡って使用されている。


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P1Rはその18650の2600mAhの容量のものが使われている。この当時、他社18650が2800~3000mAhあったので、そこまで多いというわけではない。18650には、自社製なのかOEMなのか等はわからないが、SUREFIREのロゴがある。プラス端子が出っ張ったボタントップタイプである(画像左はWolf-Eyes社の18650である168A)。当然だが、他社の18650に対応したライトにも使用できる。


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その他の付属品として、充電器はもちろんのこと、車のシガーソケットでも充電可能なアダプターまで付く。余計なものを買わずに即実戦運用ができるのは良い。


良く言えば往年SUREFIREの使い勝手そのままの充電モデル。悪く言えば特徴がないのが特徴。

では外観に移ろう。まず全体としては、近年SUREFIREの6PXやFURYに似た外観である。6PXの全長が約13センチで、こちらが約14センチなので若干長い形だ。チューブ部分は、1インチ径なので、コンバットリング等のオプション品やガンマウント等が使用できる。チューブそのものに、アンチロールデザインなのか3辺平になってる部分がある。1つはメーカーロゴ、2つ目はモデル名、だが3つ目はのっぺら坊である。ここは少しさみしい。

テール部分のボタンは半押しで押している間だけ点灯する間欠点灯、カチッと音がするまで押し込んで常時点灯となる。双方のモードで、素早くボタンを二度押すことでHiモードとLoモードを切り替えれる。最初のスタートは常にHiモードからのスタートとなるので、名前の通り法執行機関向けを意識した作りなのだろう。押し込んでのカチッと音は意外と大きめ。カチッ! ちなみに、このP1Rにはタクティカルモデルが別にあり、こちらはHiモードのみとなり、スイッチを押して間欠点灯、テールキャップを回しこんで常時点灯と言った同社6Pスタイルとなる。6Pと6Pタクティカルの反対のスイッチシステムだ。

ヘッド部分は、ヘッドを下に置いて誤点灯させても明かりが漏れて気付くためのギザギザがある。個人的にはプチストライクベゼルと呼んでいる。DNAキャッチャーも付いてることだしね。DNAキャッチャーは、「プチストライクベゼル」裏にある弾頭のような形をした穴のこと。格闘戦にもつれ込み、相手をライトで殴打した際にここに相手のDNAが付着して後の捜査に役立つという話しである。

ライトのリフレクターは、オレンジの皮のように凹凸があるオレンジピールリフレクターであり、照射パターンを均等に保つことに役立つ。そのオレンジピールは少し浅めで、ところどころに不自然な凹凸や傷がある。予算をケチったポイントだろうか。LEDはCree XM-L2を搭載。(画像一番左のコンバットリングは付属しません。)

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照射比較

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まずはHiモードの照射比較から。約80メートル先の低木にACU迷彩の上着をかけての照射。奥の森までは約150m。画像文字が赤色のものがP1Rである。(↑クリックで拡大可

Sniper-2とP1RはP1R付属の18650を使用。他ウェポンライトはCR123A(SF123A)×2個を使用。
X300とP1Rを見てもらうとわかるが、近年のSUREFIRE社のLEDの色温度は、白に近いクールホワイトと、オレンジ色のウォームホワイトの中間とも言えるニュートラルホワイトが多い。こちらの方が、夜間や霧や雨と言った悪天候での視認性も良い。目眩ましとしての効果はクールホワイトの方があるが、どうしても懐中電灯本来のモノを照らすという行為だとストレスが溜まりがちになる。P1Rの照射パターンは比較的綺麗だが、前述していたリフレクターの不自然な凹みや傷の部分が陰となって少し照射パターンを濁しているいるのは確かだ。と言っても、照射範囲はある程度確保しつつも、遠方照射も頑張っている良いものであると思う。
しかしX300を見ればわかるが、SUREFIRE社のTIRは暗く広範囲を照らし、遠方をガッツリ飛ばしている素晴らしい設計だといつ見ても感心する。

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次はチョコっとLoモードの照射比較を。5-6m先の屋根付きベンチと茂みを照らしてみた。
特にこういう近距離だと色温度と照射範囲の重要性がわかる。ちなみに、HDS T1B 200は初期設定だと15ルーメンモードがあるが、私は普段使いとしてMidモードはもう少し明るいのが好きなので35ルーメンにしている。眩しすぎず、ちょっと遠方も照らせる良い設定だ。

さて、とりあえずまとめに移るが、P1Rの前にSUREFIREはR1 LAWMANという充電モデルを出している。こちらは、ケーブルをライトにそのまま挿して充電できるという利点はあるものの、P1Rに比べて長く、充電池も専用のもので、しかも充電端子がむき出している関係上、防水性はほとんど無い。P1Rはその点、SUREFIREクオリティの18650フラッシュライトに落ち着いた。少々の悪条件下でも使用できるので、田舎の保安官が日常的に使いつつも、イザという時にもある程度対応できる。まさしく、そんなピースキーパー達のためのライトだろう。

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