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ジャンル:懐中電灯

SUREFIREのコンパクトで使い勝手の良いEDC向けライト「EB1 Backup」の後継機とも言えるライト。アップしたのは果たして明るさだけなのか?進化した使い勝手をSTREAMLIGHT社のEDCライト「Pro-Tac 1L-1AA」と比較しながら確かめてみよう。

執筆時期:2018年12月

※本製品を提供してくださったY氏に感謝致します。

STREAMLIGHT Pro-Tac 1L-1AAの詳しいレビューはココをタップ

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) SUREFIRE(アメリカ合衆国)
サイズ(全長×ヘッド径) 11.4×2.9cm
重量(電池含む) 約96グラム
光量(点灯時間) High:500ルーメン(1時間)
Lo:5ルーメン(45時間)
使用電池 CR123Aリチウム電池
最大照射距離(ANSI FL1基準) 175メートル
価格(国内価格) 165ドル(25000円)

相変わらず使い勝手の良い小さな相棒


SUREFIRE社の新生EDC向け(Every Day Carry:常に持ち歩く物)ライトとしてリリースされたEB1 Backup。こちらの正常進化とも言える機種が今回のEDCL1-Tだ。名前の通り、かつてのEシリーズ(Exective シリーズの略で、法執行機関向けのハイエンドでコンパクトな機種が多かった)を伺わせつつも、これがEDC向けであることを押し出してきている。(最後のTはTacticalの意味だろうか?)


懐中電灯業界の競争は激しさを増している。低価格で質の良い中国製ライトメーカーはどんどん増えており、年々ユニークで面白い製品を出しており、ACEBEAM W10のように新しい技術やアイデアをいち早く取り入れており、向上心も強い。SUREFIRE社もこれらに対抗するため、近年は価格を下げた製品ラインナップが多く散見される。バッテリーやLED素子の進化もあり、特にコンパクトなEDC向け懐中電灯は様々な方面からの需要もあって競争は熾烈を極める。今回のEDCL1-Tも価格を200ドルを大幅にきった定価165ドル(2018年12月の円換算では約18700円)で販売されている。それでも、このクラスのライトしては非常に高価だ。特に、今回比較対象であるSTREAMLIGHT社の1L-1AA34.48ドルと、1/4以下の価格で購入できてしまう。さて、EDCL1-Tはこの価格差ほどの性能があるのだろうか?これから見ていこう。


パッケージは昨今のSUREFIREハンディーライト共通のシンプルで落ち着いたデザインのブリスターパック。相変わらず素手で綺麗に開封するのは困難で、持ち主のY氏はカッターナイフで15分かけて切り開いたと言っていた。私ならパッケージはもう諦めてハサミかナイフで裁断するだろう。

中に入っている説明書もシンプルなイラストのみの簡易なもの。

このパッケージは、工具や専門道具いった雰囲気が醸し出されクールだ。


全体的なデザインやサイズはEB1とほとんど変わらないものの、滑り止め用に付いていた縦線のスリットがE1Dのようなチェッカリングに変わっている。


スイッチ機構は、同社L1やアップグレード版のEB1同様にテールスイッチ半押しでLoモード間欠点灯、深く押し込んでHighモード間欠点灯だ(スイッチを押している間だけ点灯)。常時点灯をさせるには、時計回りにテールスイッチを回してLo、更に回してHighの点灯となる。

スイッチボタンは、EB1と比べると出っ張りが少なくなっており、ほんの少しだけ硬めのテンションである。

このスイッチシステムでも、素早く指をタップすれば、手動でストロボを用いた戦術はできないことはない。ただし、構造上どうしても暗いLoモードをまたいでの点灯になるので、ボワッと明るくなるフィラメントライトのような点灯になるので、眩惑性能は少し低下するし、こちらの正確な位置を見破られる可能性も多少考慮に入れておいた方がいい。


握りやすさに関しては、手の大きさで少し左右されそうだ。私のような小さな手だと、1L-1AAの方がテール側とボディ側の適度な凹凸で握りやすい。ただ、1L-1AAは全体的にEDCL1-Tよりも少し小さめなので、手の大きな人には操作や握りやすさが少しやりにくいかもしれない。

EDCL1-Tの方は、細身のボディに比べて、ヘッドだけがボコンと太め(2.85cm)なので、このような逆手持ちだと小指以外が少し余りがち。クリップの位置をどこにするかで感覚がだいぶ違ってくる。

私は両者共、クリップは手の平側にしたほうがいいと考える。個人的にこちらのほうがグリップ感があるし、ライトを用いた格闘時にクリップが原因で余計な怪我を少しでも軽減できる。(手の平を怪我するか、指先を怪我するかの違い)

1L-1AAの全長は10.8cm、EDCL1-Tは11.4cmだ。格闘戦をするには、やはり最低でも10.5cm以上の長さが必要だと私は考える。この機種はどちらもその点では良い。


テールキャップを外して後ろから電池を入れるタイプが懐中電灯には多いが、このEDCL1-Tは前機種と同じくヘッド部を外して前から電池を入れるタイプ。

クリップに関してだが、両者とも上下どちらからでも差せるクリップを採用。このような上下使用可能なクリップは先端部から差す方は圧が弱めだが、本製品とストリームライトを比べる限りだと1L-1AAの方が幅が太いこともあり強めだ。

1L-1AAのクリップは取り外しできるが、こちらは従来どおり取り外しはできない。クリップの折返し部にストラップ・ランヤード用の穴が空いている。私はストラップを誤って引っ張ってしまった際に、クリップが緩くなるのが嫌なので、テールキャップに穴が空いているタイプの方が好みではある。


この機種はSUREFIREお馴染みのTIR(Total Internal Reflection:集光レンズを用いた物)を採用。いつも通りのTIRと思いきや、今回はSUREFIRE XH30ウェポンライトのように中心光が大きめ設定されており、遠距離照射性能は少しだけ落ちたが、より日常的にも近接戦闘でも使いやすくなっている。照射テストは後述するのでそちらを見ていただきたい。


一方STREAMLIGHT 1L-1AAの方はスムースリフレクターを採用。

ベゼル部だが、1L-1AAには3つの突起が、EDCL1-Tには6つの突起が付いている。どちらもそこまで深く尖っていない浅めの突起だが、格闘戦では大きなインパクトとなる。できれば、格闘戦を考慮する場合は突起は4つ以上が望ましい。

では照射テストに移ろう。いつもの公園にて、100メートル先の反射板付きの自転車に向けて照射。奥の森までは150メートルだ。電池は両者共新品のCR123Aリチウム電池を使用し、1L-1AAはRCR123Aリチウムイオン電池も使用してみた。


※画像クリックで拡大可


中心部拡大画像

※画像クリックで拡大可

照射範囲だが、これに関してはSUREFIRE社お得意のTIRを搭載したEDCL1-Tに敵うものではない。照射距離も、500ルーメンという数値やTIRの恩恵もあり、同じCR123A使用のライトでもEDCL1-Tの方が上だ。

1L-1AAは、CR123Aの使用で最高光度350ルーメンで、この電池を使用する近年のライトとしては少し控えめな数値だ。おそらく戦闘向けとして使用可能な明るさを少しでも長く保つことを選んだためと思われる。

350ルーメンの最高光度は、40分程度で200ルーメン前後まで落ち、その後1時間を越えたあたりで100ルーメンまでガタッと落ちて1.5時間で息絶えるようになっているようだ。一方、SUREFIREのEDCL1-Tは500ルーメンという数値こそ出るものの、1時間で50ルーメン近くまで落ちて終了となる。どちらが良いかは好みや運用上の問題だろう。

1L-1AAをRCR123Aで使用してみると、明らかに350ルーメンよりも明るくなる。正確な数値はわからないが、おそらく400ルーメン後半近くまで出ているのではないかと思われる。

SUREFIRE EDCL1-TでRCR123Aの使用はできない。許可を得てこちらで試したところ、スイッチをどう操作してもLoモードでしか点灯できなかった。どこの馬の骨かわらない充電池を使われ、壊れたとクレームが来たり、信頼性が無いと不本意に騒がれるくらいなら使わせないということだろう。

懐中電灯の不具合は、劣化していたり、信頼性の低い電池を使用して起きるケースが多い。

EDCL1-Tを始め、ここ最近のTIR搭載ライトは、中心光を従来のものより少し大きめに設定されており、遠距離照射性能は少しだけ落ちているものの、より中距離や近距離での照射対象の視認性を上げている。昔のスポット配光のTIRが好きな人には物足りないかもしれないが。

EDCL1-Tは、Highモードでの照射をした場合、本体から非常に小さな音ではあるが「ヒーン」という高周波音が聞こえる。


※画像クリックで拡大可

FBIテクニックや、ネックインデックスでの使用を想定して、170センチの高さから15メートル先のベンチに向けて照射。

EDCL1-Tの暗くて広大な外縁光は素晴らしいものだ。私としては、これぞTIRの醍醐味だと思う。170度近くの広大な外縁光で暗順応の阻害を抑えながら、広い視野を確保できる。

→外縁光は画面や写真の明るさを上げ、三脚の足元を見ていただくとよくわかる。

その内側の周辺光は、中心光を補うように近~中距離を適度に明るく広く照らす。自分が向かう先の障害物や地形を瞬時に把握できる。そして中央の中心光は、従来のものよりも少し大きめに設定し、どんな距離でも人や車両等の全体を把握でき、ハッキリと浮かび上げてくれる。

LEDの色温度はEDCL1-Tが若干低め。両者真っ白ではなく、少し低めの色温度にすることで眩しさよりも視認性の向上を狙っている。


EDCL1-TのLoモード(5ルーメン)。たった5ルーメンと思うかもしれないが、相変わらず数値以上に明るく感じる。特に中心光が大きくなったことで、より使い勝手も高くなっている。50メートルくらいまでなら照らせる。

このLoモードでも、少々なら山の中の散歩も可能だ。暗順応も阻害されにくく、しかも点灯時間は45時間なので非常に役立つ。

Loモードに関しては5ルーメンではなく、せめて15ルーメンくらいにして欲しいとの要望は多く聞く。その理由も理解できるが、SUREFIRE社のこのメリハリを付けたさじ加減は私は嫌いではない。もちろん、過去に名機と呼ばれたL1 Lumamaxのように15ルーメンで明るく長く点灯して散歩に適したライトの良さもわかるが、この使いやすい5ルーメンなら、手元確認から少々のお散歩まで幅広く使える。

山や真っ暗なエリアでは5ルーメンで歩き、遠距離照射をしたい時はHighモードの500ルーメンを照らす。明るい夜の街中では点灯させず、要所要所でHiモードを使用するという使い方が私は好きだ。


あまり良くないハンドリングについてだが、Thyrm社のSwithBack S Backupを装着すると、テール側が少し太くなるのとリングが付くことによって改善する。しかも、これによりハンズフリーでの運用もできるので、ライトを持った指をリングにかけたままで、両手で他の作業ができる。非常に便利だ。

ただ、取り外しができないクリップが少し邪魔で、常時点灯をする際のテールキャップを回す作業が少しやりにくくなる。深く回しこんでのHighモード常時点灯はクリップギリギリにリングを設置するとできないことはない。私がこのライトを運用する場合は間欠点灯ばかりで、特にHighモードの常時点灯はあまり使わないので気にならない。


ただ、EDCL1-Tのスイッチが硬めなので、スイッチバックを利用したハンドガンとの運用にオススメな写真のような点灯は、かなり指に力を入れてグッと押さないとHighモードで点灯はできない。この方法だとあまり戦術的な使用は望めないので、大人しく逆手持ちをするか、上下逆にして中指をリングに入れ、人差し指をリング末端にかけ、親指でスイッチを押すという方法をオススメする。


今回、昨今の懐中電灯情勢を鑑みて200ドルを大幅に切る価格での販売となったが、それでもこのクラスの懐中電灯としては非常に高価であることに変わりない。ただ、より利便性を高め進化したTIR、相変わらずの業界トップクラスの信頼性能、使っていて実感できる高い満足感を考えると、定価165ドルでも良いと考えれるし、人によっては安く感じるだろう。EDCライトとしての性能は高く、防戦・護身とした運用ならばタクティカルライトとしての運用も可能だ。

●さて、現在(2018年12月)SUREFIREではこのようにCR123A電池一つで駆動するEDC向けライトがいくつかあり、素人目ではどんな違いがあるのかわかりにくい。以下に特徴を列挙したので、購入の際に参考にしてもらいたい。

EDCL1-T:本製品。500ルーメン&5ルーメン。遠距離照射能力を重視したEDCライト。周囲への配光にも気を配っているので何だかんだで万能選手。

AVIATOR:250ルーメン&カラーLED。TIRレンズ搭載の250ルーメンで遠距離を照らしつつ、白・赤・青・黄緑・橙のカラーLEDの中から一つチョイスすることが可能。様々な専門用途にライトを使うことも視野に入れた製品。

E1B MaxVision:400ルーメン&5ルーメン。EDCL1-Tよりもコンパクトなボディサイズ(全長9.8cm)で、MaxVisionリフレクターを採用しているので、近距離や室内を明るく広範囲に照らしだすことが可能。

V1 Vampire:250ルーメン&15ルーメンのLEDに加え、赤外線ライト(100mW & 5mW)を備えたモデル。暗視装置の補助光としての使用を想定したもの。

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