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ジャンル:懐中電灯、タクティカルライト

ストライクベゼルを搭載した護身用のライトに、カランビットナイフのようなリングを搭載し、より近接戦闘に特化したユニークな懐中電灯。

執筆時期:2017/11/19

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) MANDIOLA DEFENCE (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
サイズ(全長×ヘッド・ボディ幅×テール幅) 155mm×27.2mm×46.8mm
重量 78グラム(バッテリーを含まない)
使用LED Cree XM-L2
最大光量 1000ルーメン(ANSI規準)
モード(光量・点灯時間) 18Hzストロボ(1000ルーメン) / Hi(1000ルーメン・9時間)/ Lo(20ルーメン・65時間)
ボディ素材 航空機グレードアルミニウム
使用電池 CR123A×2個
電圧許容範囲 2.7V~9V
耐衝撃性能 1.8m
防水性能 IPX-8
価格 89.95ドル

カランビットライト

人類は、新たなものを生み出すだけでなく、既存のものを組み合わせ、新たな時代やジャンルを生み出してきた。今朝私が食べたサンドイッチもそうだし、スマートフォンなぞまさに既存テクノロジーの集合体だ。それは武器の世界でも同じことが言える。そうだ!ライフルの上に単眼鏡を載せよう、自動車の上に大砲を載せるとクールなことになるぞ!!といったモノで戦場は大昔から今日に至るまで大盛況である。そして、ここにひとつ、誰もが考えそうで意外にも具現化されなかったものが誕生した。


それが今回紹介するSTOROBEFORCE D-TAC1000だ。格闘や護身術等の近接戦闘術を教えたり、ナイフ類の開発や販売を行っているアメリカのMANDIOLA DEFENCEが考案した、カランビットナイフのようなリングを備えた懐中電灯だ。今までも、SUREFIRE社のコンバットリングのようなリングを搭載したライトは存在したが、このようなリングが最初から付いていて、しかもカランビットナイフタイプのものは私が知る限り初めてだ。


スラッと無駄のないデザインで至ってシンプルである。


全長は15cm程度で、想定されている使い方としてはまずまずな長さ。


ストライクベゼル
付きのヘッド。このパーツだけシルバーとなっている。このようなストライクベゼルは格闘能力や威圧感を大幅に高め、護身用の懐中電灯として一定の需要があり、様々なメーカーから販売されている。とは言え、懐中電灯を完全に武器や護身用品としてのジャンルに変えてしまうため、我が国でこんな懐中電灯を携行していた場合は軽犯罪法に抵触する可能性は高い。


ストライクベゼルは取り外し可能。ポケットやバッグがを傷つけるのが嫌な人や、照射能力を下げたく無い人にはこちらがオススメだ。リフレクターは小型のボディにスムースリフレクターを搭載し、全体的に明るく、かつ遠距離もある程度得意とする照射をしてくれる。LEDはCree XM-L2。細めなコンパクトボディで1000ルーメンも出るので、Hiモードではボディがすぐに持てなくなるほど熱くなる。Hiモードはあまり多様するなと説明書にも書いてあるほどだ。

早速照射してみよう。約80m先に反射材を添付したACU迷彩の上着を置き、そこにめがけて照射。奥の森までは約150mだ。照射比較用のライトはすべて戦闘や護身用を考慮したタクティカルライトで、使用する電池はすべてCR123Aリチウム電池×2個の製品だ。

○STROBE FORCE D-TAC1000:1000ルーメン(本製品)

STREAM LIGHT TLR1HL:800ルーメン

FIRST LIGHT USA T-MAX :700ルーメン

となっている。


※画像クリックで拡大可

やはり1000ルーメンという数値は伊達ではない。少し浅めでコンパクトなスムースリフレクターなのもあり、近距離や周辺光も明るく、遠距離もある程度届いている。照射パターンの美しさは、あまり期待していなかったが、思ったよりも良く、変に陰になったりムラが目立つことは無い。光の色温度は白色寄りのクールホワイトに近く、近距離や周辺光もガッツリ明るいので、暗順応は結構阻害されてしまう。Loモード(20ルーメン)での使用はお散歩や普段使用には向いている。

 


※画像クリックで拡大可

遠方部拡大画像。こう見ると、TLR-1HLやT-MAXの方が最大光量こそ少ないものの、遠方までよく届いているのがわかる。D-TAC1000と違い、視認性の良い暖色系と寒色系の中間の色温度であるニュートラルホワイト寄りなのもそれを手伝っているだろう。また、TLR-1HLはTIRレンズを使用しているので、周辺光は暗順応のためにも少し抑え、中~遠距離に配慮したウェポンライトだ。D-TAC1000のようなクールホワイトな色温度のLEDは、照射された側は凄まじく眩しくて眩惑効果が高いが、雨や霧と言った環境下では視認性が悪くなるという欠点がある。

ちなみに上記の写真はストライクベゼルを取っ払った場合での照射パターンだ。


ストライクベゼルを付けると当然こうなる。ここは深めのストライクベゼルを付ける以上、トレードオフになる仕方のない部分だろう。


スイッチ部。ウェポンライトのコードスイッチのような細長い電子スイッチで操作する。プコップコッという感触で「18Hzのストロボ(1000ルーメン) → Hiモード(1000ルーメン) → Loモード(20ルーメン)」の3モードがスイッチを押す毎に順次切り替わる。スイッチを押している間だけ点灯可能な間欠点灯ができず、常時点灯のみ。説明書には、スイッチ単発押しで間欠点灯ができるとあるが、不具合なのかそんなことはできない。しかも、OFFの状態からいきなりストロボモードでスタートするので特に日常使いとしては大変悪い。更に、OFFにするにはスイッチを3秒間押し続けないといけないのも拍車をかけている。ここがこのライトの致命的な欠点だ。タクティカルライトとしても日常的な懐中電灯としても使い勝手が悪い。


クリップ。短めだが、クリップの圧力は結構強力だ。左右付け替え可能。


リングはそれこそカランビットナイフから抜け出たような形状だ。小さめで、私のような小柄なアジア人にはちょうどよい。このようなリングは、脱落防止やクリップでズボンの内部やポケットに深く隠し入れた状態の時に抜きやすく、敵からも奪われにくく両手を空けれるという利点がある。大変便利だ。


カランビットナイフのように逆手持ち・リバースグリップで持ってみた。この場合、スイッチは手のひらで押すことになる。細長いスイッチとは言え、押し心地はあまり良くない。


懐中電灯はある程度の長さがあるので、それこそカランビットナイフのように相手を引っ掛けたりとコントロールする手法も可能だ。


純手持ちのセイバーグリップ。こちらの方が格闘能力は低下するが、スイッチは押しやすい。


電池はCR123Aリチウム電池を2個使用する。ボディ形状が細いので、18650リチウムイオン電池のような太めの電池は入らない。また、電圧の許容範囲的にはRCR123Aのようなリチウムイオン電池も使えるが、メーカー側は推奨していない。

当初、やけに点灯不良が目立ったのでどうしたもんかと思って内部を覗いてみると、内部のマイナス側のスプリングがコロコロと向きを変えていた。このスプリングは溶接や接着がされておらず、電池交換でひっくり返したりした際にコロんと落ちることもある。格闘用を謳い、激しいインパクトを与える可能性がある製品にこれはいただけない。


付属品は交換用Oリングと、パナソニック製のCR123Aリチウム電池2個。説明書はシンプルなイラスト付きの簡単なもの。このライトは、MANDIOLA DEFENCEが運営するTHE ULTIMATE KNIFE.comでのみ購入できる。当初は129.95ドルだったが、今は85ドルになっている。発想やデザインは悪くなかったのだが、スイッチシステムや精度に問題があるライトだ。これを戦闘や護身用に使うのはムリがあり、かえって危険因子や不安要素になりかねない。