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ジャンル:懐中電灯

様々な電池がパーツの交換無しで使える、ストリームライト社のコンパクトなEDCタクティカルライト。ライバルメーカーであるSUREFIRE社の人気EDCライト「EDCL1-T」との比較も交えながら紹介しよう。

執筆時期:2018年12月

※SUREFIRE社のEDCライト「EDCL1-T」の詳しいレビューはコチラをタップ。

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) STREAMLIGHT(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
カラー ブラック(本製品)、コヨーテ
サイズ(全長×ヘッド径×チューブ径) 10.8×2.27×1.95cm
重量(CR123A電池含) 約80グラム
光量(点灯時間) High:350ルーメン(1.3時間)
  Lo:40ルーメン(14時間)
使用電池 CR123Aリチウム電池 or 単3アルカリ電池
最大照射距離 160メートル
防水性能 IPX7(水深1mに30分)
耐衝撃性能 2m
購入価格(国内価格) 34.48ドル(7000~8000円代)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 高い信頼性とコストパフォーマンス
  CR123Aだけでなく、単3電池等の多種多様な電池がそのまま使える
  様々なニーズに対応した点灯プラグラム変更が可能
  タクティカルライトとしても使えるポテンシャル
改善を要する点 Loモードをもう少し暗く、長時間点灯にしてほしい
  スイッチのテンションをもう少し固くしてほしい

単4~RCR123Aまで何でも入っちゃう

ひねくれ者な全知全能の神から、プロメテウスが人類に火を与えてからというもの、人間は夜でも獣や魑魅魍魎に恐れることなく、快適に暖かく夜を過ごすことができるようになった。そんな快適さを手に入れ、明かりのある生活が当たり前になったからこそ、人類はより一層暗闇を恐れるようになったとも言える。

世界各地で自然災害が目立った2018年、ふだん放ったらかしの懐中電灯をやっとのことで探し当てたはいいものの、乾電池が切れていたり、見るも無残な姿に変わり果て、暗闇を彷徨った人は少なくなかっただろう。よほど懐中電灯や乾電池に飢えていたのか、仕事の一環で某県の被災地支援に行った際、持参した懐中電灯や電池の半数程度が待機所や避難施設でMIA(Missed In Action:戦時行方不明兵士)となってしまった。人の物を盗るくらいなら一言申し付けてくれたら譲渡してたかもしれないし、平時からこのような基本的なモノは揃えておきなさいと言いたいところだが、まぁなかなかそうはいかないだろう。普通の人は懐中電灯なぞ普段から使うものでもないし、例え明かりが欲しい状況になっても、携帯電話に必ず付いていると言っても過言ではないLEDライトで大抵の状況は事足りる。特にそれがCR123Aなどと言う大出力・大容量だが普段は使いみちのまずありはしない電池を用いた機種だと尚の事だ。


だが、スマートフォンで事足りるとは言え専用道具にはそれなりの良さが当然ある。懐中電灯は災害であれ犯罪であれ、緊急時の生存への道しるべの道具として海外ではEDC(Every Day Carry:常に持ち歩く物)アイテムして定番のガジェットだ。また、暗い夜道の出歩きにも安全や犯罪抑止としての効果もある。さて、今回紹介するストリームライト社のProTac 1L-1AAは、普段懐中電灯を持ち歩くユーザーにも、懐中電灯は緊急時くらいしか使わないというユーザーにもオススメの一本である。


外観は、ストリームライト社のその他タクティカル向けライト同様の、少しざらつきのあるソリッド・シンプルな外観。ヒートシンクは控えめで、ナーリングも開け閉めをするテールキャップ以外には設けていない。

ヘッド部のヒートシンクは角が作られているので、転がり防止になっている。


クリップはSUREFIRE社の現行Eシリーズ同様に、非常に便利な上からでも下からでも使用できるタイプのクリップ。ストリームライト社のものは、取り外しが可能で先端にストラップ・ランヤードホールが設けられている。


と、言うことでSUREFIRE社の同じくEDC(Every Day Carry:毎日持ち歩く物)向けのEDCL1-Tとの外観比較。

ボディ形状はストリームライト社の1L-1AAの方が細いが(1.95cm)、後端部はボコッと太っておりヘッド部(2.27cm)と同じ寸法になっている。SUREFIRE社のEDCL1-Tのボディ径最大幅は2.09mmだ。

故に、1L-1AAはThyrm社のSwitchBack Sコンバットリングを取り付けることはできない。コンバットリング側を加工した場合は、耐久性が疎かになるのでやめておいた方が良いだろう。

両者とも、このような上下使用可能なクリップは先端部から差す方は圧が弱めだが、二つを比べる限りだと1L-1AAの方が幅が太いこともあり強めだ。低価格ながらよい作りであると思う。

このクリップの強さに関しては、若干の個体差が確認された。少し弱めのものもあった。


握りやすさに関しては、手の大きさで少し左右されそうだ。私のような小さな手だと、1L-1AAの方がテール側とボディ側の適度な凹凸で握りやすい。ただ、1L-1AAは全体的にEDCL1-Tよりも少し小さめなので、手の大きな人には操作や握りやすさが少しやりにくいかもしれない。

EDCL1-Tの方は、細身のボディに比べて、ヘッドだけがボコンと太め(2.85cm)なので、このような逆手持ちだと小指以外が少し余りがち。クリップの位置をどこにするかで感覚がだいぶ違ってくる。

私は両者共、クリップは手の平側にしたほうがいいと考える。個人的にこちらのほうがグリップ感があるし、ライトを用いた格闘時にクリップが原因で余計な怪我を少しでも軽減できる。(手の平を怪我するか、指先を怪我するかの違い)

EDCL1-Tの全長は10.8cm、EDCL1-Tは11.4cmだ。格闘戦をするには、やはり最低でも10.5cm以上の長さが必要だと私は考える。この機種はどちらもその点では良い。


リフレクターは、1L-1AAがスムースリフレクター(凹凸の無いツルツルした反射鏡)で、EDCL1-Tがシュアファイヤーお得意のTIR(Total Internal Reflection:集光レンズを用いた物)だ。

こうしてみると、ヘッド径の大きさの違いがわかる。大きさやリフレクターの違いから各々がどのような配光になるのかは後述するのでお楽しみに。

1L-1AAは写真にも薄っすら写っているが、前面ガラス製レンズ周辺部に青紫色のコーティングが施されている。近距離で照らした場合はこのコーティングが少し見える。

両者とも、公式にはどのようなLED素子を搭載しているかに関しては詳しく発表や表記はしていない。

ベゼル部だが、1L-1AAには3つの突起が、EDCL1-Tには6つの突起が付いている。どちらもそこまで深く尖っていない浅めの突起だが、格闘戦では大きなインパクトとなる。できれば、格闘戦を考慮する場合は突起は4つ以上が望ましい。

値段に関しては、SUREFIRE EDCL1-Tが165ドル(2018年12月の円換算で約18700円)なのに対して、STREAMLIGHT 1L-1AAは40ドル以下と1/4以下の安値で購入ができる。これは、中国製のタクティカル向け懐中電灯の価格よりも安い値段だ。

安い価格にも関わらず安かろう悪かろう感はそこまで感じない。耐衝撃性も2メートルを確保しており、並の懐中電灯(概ね1~1.5m)よりも頑丈だ。現にこのライトは仕事で何本か購入して、いろんな場所に不注意やテスト込みで落としたりぶつけたり、格闘訓練に用いたりしたが、一つだけレンズが破損したのを除いて大きな不具合は無い。これは壊すほうが難しいだろうというような屈強な作りではないが、値段からは考えられないほどの良い作りだ。ここ10年ほどで質の良い中国製ライトがどんどん登場し、シュアファイヤーやストリームライトのような老舗タクティカルライトメーカーは厳しい波に飲まれているとは思うが、この製品に関してはよく頑張っているものだと思う。


ストリームライト社のロゴが模られたスイッチは、プコプコと柔らかめな押し心地。誤点灯を防ぐためにも、スイッチ周りは周囲を突起が囲んではいるが、カバンや装備のやり方次第では不注意で点灯してしまう可能性はある。このライトは、スイッチを押した回数によって点灯モードを切り替えるタイプのものなので、個人的にはもう少し硬めのスイッチが良い。

テールキャップを少しひねるとロックアウトするので、即応性を求めない場合はその方がよいだろう。

突起部に付いている穴はストラップ・ランヤードホール。

テール部を下にしての自立はギリギリできるかできないかといった感じ。

スイッチは半押しで間欠点灯、カチッと音がするまで押し込んで常時点灯となる。

モード切り替えは、素早いスイッチ操作で行うタイプで、デフォルトではワンクリックでHiモード、2クリックでストロボ、3クリックでLoモードとなる。半押しでも全押しでもこの操作は可能だ。

また、ストリームライト社の製品によく搭載されている、TEN-TAPプログラミング機能があり、9回素早く半押しを行い10回目でカチッとクリックさせるとプログラムを切り替えることができる。これにより、デフォルトのHi→ストロボ→Lo以外にも、HiオンリーやHi→Loのプログラムを選択可能だ。こういう、ニーズに合わせて様々なプログラムを用意してくれている点は評価したい。

このスイッチシステムは、ストロボを使用を想定したタクティカルライトしての運用は少し使いづらい。護身や防犯目的であるならば可能だろう。


ようやくだが、このライトの目玉ポイントに移ろう。

このライトの特徴は、パーツの交換や追加無しで様々な電池を使用できる点だ。CR123Aリチウム電池はもちろんのこと、アルカリやニッケル水素、リチウムの単3形電池まで使用可能だ。

また、公式にはサポートされてはいないが、単4形電池や定格電圧3.6VのRCR123A(16340)リチウムイオン電池の使用もできたから驚きだ。

さすがに単5形電池は点灯できなかった。

電圧の違いは昇降圧回路を組み込むとして、こうもサイズの違う電池がどうやって入って点灯するのか?それは1L-1AAのテールキャップを開けて中を見ればわかる。普段はCR123Aサイズの電池が入る容積しかないバッテリーコンパートメント(チューブ)が、よく見ると単3形電池の直径分だけ切れ込みがある。この切れ込みが、単3形電池や単4形電池を入れることで沈み込むようになっており、これでCR123Aよりサイズが長く細い単3形電池を入れても蓋が閉まり、しかもガタが出にくい仕組みになっているのだ。

今までCR123Aと単3形電池を使用できる懐中電灯はいくらかあった。しかし、そのほとんどはボディに延長パーツを組み込む等のパーツ差替が必要なものがほとんどだった。比較的低価格なタクティカルライトながら、このような画期的なシステムを組み込んだのには恐れ入る。幅広い電池が使用できるので、普段使いにはもちろんのこと、災害時や補給があまり見込めれない状況でも役立つ。

そういえば、この手のライトとしては珍しくテールキャップ側のOリングが赤色だ。安い中国製ライトではちょくちょく見られることもあるが、この手の製品では紛失防止や普段は目立たない良いアクセントにもなって私は気に入っている。


パッケージ。ブリスターパックだが、SUREFIRE製品のように刃物が無いと開けれないようなものではない。CR123Aリチウム電池とアルカリ単3形電池が付属しており、両者を使えることを示唆している。説明書はパッケージの裏側にそのまま印字されているシンプルなもの。


付属のポーチ。ベルトループがベルクロで調節可能だ。このような付属品にも、こういう細かな気遣いがあると嬉しい。この手のポーチはただ付属させているだけで、利便性の低いものが多い。

では照射テストに移ろう。いつもの公園にて、100メートル先の反射板付きの自転車に向けて照射。奥の森までは150メートルだ。電池は両者共新品のCR123Aリチウム電池を使用し、1L-1AAはRCR123Aリチウムイオン電池も使用してみた。(SUREFIRE EDCL1-TにはRCR123Aは使用不可)


※画像クリックで拡大可


中心部拡大画像

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照射範囲だが、これに関してはSUREFIRE社お得意のTIRを搭載したEDCL1-Tに敵うものではない。照射距離も、500ルーメンという数値やTIRの恩恵もあり、同じCR123A使用のライトでもEDCL1-Tの方が上だ。

1L-1AAは、CR123Aの使用で最高光度350ルーメンで、この電池を使用する近年のライトとしては少し控えめな数値だ。おそらく戦闘向けとして使用可能な明るさを少しでも長く保つことを選んだためと思われる。

350ルーメンの最高光度は、40分程度で200ルーメン前後まで落ち、その後1時間を越えたあたりで100ルーメンまでガタッと落ちて1.5時間で息絶えるようになっているようだ。一方、SUREFIREのEDCL1-Tは500ルーメンという数値こそ出るものの、1時間で50ルーメン近くまで落ちて終了となる。どちらが良いかは好みの問題だろう。

1L-1AAをRCR123Aで使用してみると、明らかに350ルーメンよりも明るくなる。正確な数値はわからないが、おそらく400ルーメン後半近くまで出ているのではないかと思われる。

モニターの光度を上げて見ればわかるが、1L-1AAの照射画像の足元、三脚あたりを見ればわかるが、上述したレンズ周辺の青紫色のコーティングが写り込んでいる。


※画像クリックで拡大可

FBIテクニックや、ネックインデックスでの使用を想定して、170センチの高さから15メートル先のベンチに向けて照射。

EDCL1-Tの暗くて広大な外縁光には負けるが、1L-1AAの方も適度な周辺光と外縁光に加え、スポットすぎない大きさの中心光により、150メートルをこえる遠距離照射さえ期待しなければ、様々な局面でそつなく使用できる配光パターンだ。


1L-1AAのLoモードである40ルーメン。個人的には、このモードをせめて15ルーメン程度に落として利便性とランタイムを伸ばして欲しかった。この40ルーメンはCR123Aで14時間、単3形アルカリ電池で7.5時間のランタイムとなる。災害時の一晩や数日間補給の見込みが望めない場合だと心細い。

このLoモードは、ある程度の明るさを保って安心して夜道を歩かせるための明るさではないかと推測する。ちなみにLoモードの明るさは単3電池を使っても同じだ。

一方EDCL1-TのLoモードは5ルーメンで45時間のランタイム。SUREFIREの5ルーメンは想像よりも明るく実用的なので、私はこちらのほうが好みだ。


※Mid modeと書いているのは誤表記です。Low modeです。

RCR123A(16340)リチウムイオン電池を使えば、より明るく、充電も可能でランニングコストも安くつくと思うかもしれないが、Loモード使用時に少し問題が出てくる。写真のように、やけに明るく照射してしまうのだ。おそらく150ルーメン近くは出ているだろう。もちろんランタイムも短い。これでは普段使いとしての利便性はより悪い。そもそもRCR123Aの使用はサポートされていないので自己責任で。


こちらはアルカリ単3形電池を使用してのHiモードだ。公式には150ルーメンで、どうしても先程までの300ルーメン越えの明るさを見ると暗く感じるが、150メートル先まで届いているし、使用に関してそこまで不便はない。

単3形電池で運用する場合は、使い捨てで値段は高いが、ぜひリチウム電池を使用して欲しい。そうすると、Hiモードは4時間15分、Loモードは14時間の点灯が可能になる。しかも、Hiモードの150ルーメンはアルカリ電池同様に10分程度で100ルーメン前後まで落ちるものの、そのまま明るさを保ったままで4時間以上点灯可能なのだ。

ランタイムを計測をしてはいないが、エネループのような大容量のニッケル水素電池を使用すれば、再充電もできるし長いランタイムでの使用も可能だろう。

Loモードがもう少し暗く、ランタイムを伸ばして欲しい要望はあるが、こんなライトが40ドル以下で購入できるのは非常に素晴らしいことだ。アメリカでは安価で信頼性の高いEDCライトとしても人気なのも納得だ。

制限付きではあるが永久保証なのもポイントだ。ストリームライト社の努力と工夫を感じる良いライトだ。

※SUREFIRE社のEDCライト「EDCL1-T」の詳しいレビューはコチラをタップ。