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ジャンル:懐中電灯

比較的低価格帯ながら、高い光量と10mからの落下に耐えうる耐衝撃性能を持ったコンパクトライト。

執筆時期:2018年12月

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) Armytek(カナダ・中華人民共和国)
サイズ(全長×ボディ径×ヘッド径) 10.5×2.54×2.45cm
重量 約65グラム
LED素子 Cree XP-L
光量(点灯時間) Turbo2:650ルーメン(0.7時間)
Turbo1:280ルーメン(1.8時間)
Main3:95ルーメン(6.2時間)
Main2:34ルーメン(18時間)
Main1:10ルーメン(55時間)
Firefly:2ルーメン(13日)
Strobe2:650ルーメン(15Hz / 1.5時間)
Strobe1:70ルーメン(15Hz / 36時間)
使用電池 CR123Aリチウム電池 or 18350 / RCR123Aリチウムイオン電池
最大照射距離 131メートル
耐衝撃性能 10m
防水性能 水深10mに2.5時間
価格(購入価格) 55ドル(38ドル)

カナディアンフラッシュライト

知人から懐中電灯が壊れたので新調したいとの依頼があり、海外の某懐中電灯ショップで買い物中に、今回紹介する懐中電灯を見つけた。注目した理由は、耐衝撃性能が10メートルという表記だからだ。最初は1メートルの誤表記かと思ったが、公式ページを覗いても同じで、値段も安かったのでどんなものかと取り寄せてみた。

Armytek(アーミーテック)社はカナダの比較的新しい懐中電灯メーカーではあるが、その社名に恥じない高い耐久性を持ちつつ、価格を抑えた良い製品作りに定評がある。LEDやメカニカル系統の重要な部品類は米国や日本といった信頼性の高い国から選び、製造は中国の自社工場にて行っているようだ。また、様々なテストに関しては過酷なカナダの大自然の洗礼を受けて鍛えさせているとか。そのおかげもあってか、最近では米国だけでなく、特にヨーロッパの軍や公的機関での採用等の噂を耳にする。また、タクティカル系のライトだけでなく、EDC用途(毎日持ち歩く物)やアウトドア向けのヘッドライトも注目を集めつつある、非中国系懐中電灯メーカーとしては今後の商品展開や成長が楽しみな企業でもある。


今回取り寄せた製品は、CR123Aリチウム電池1本を使用するコンパクトなEDCタクティカルライトであるPartner C1 Proである。

全長は10.5センチ、ボディ径は1インチ(2.54センチ)仕様のコンパクトな懐中電灯だ。スイッチは、主に点灯用のテールスイッチと、ヘッド側にモード切替用のサイドスイッチがある。

初期バージョンはサイドスイッチは黄色だったようだが、現行型は白色になっている。

このシリーズとしては、テールスイッチとストライクベゼルを廃して一般ユース向けのPrimeシリーズがある。今回のPartnerにもPrimeにも、CR123Aリチウム電池1個使用のC1、2個使用のC2、単3形電池使用のA1とA2とラインナップされており、使用したい電池やランタイムに合わせた幅広い選択が可能だ。


滑り止め用のチェッカリングが無い代わりに、各部位に凹凸の多いライトだ。この手の安価なライトはスルッとした寸胴型が多いイメージだが、この製品は丸みを帯びた中にもカクッとした印象も含ませたデザインだ。

操作系は、まずテールスイッチの半押しで押している間だけの間欠点灯で、カチッとクリック音がするまで押して常時点灯と言ったポピュラーなもの。

モード切替に関しては、ライト点灯中にサイドスイッチを押すことで、切替可能だ。モードは、

○Turbo2:650ルーメン(0.7時間) または Turbo1:280ルーメン(1.8時間)

○Main3:95ルーメン(6.2時間)

○Main2:34ルーメン(18時間)

○Main1:10ルーメン(55時間)

○Firefly:2ルーメン(13日)

の5つのモードをチョイスできる。ここで選択したモードは、記憶させることができ、次回点灯時にそのモードからスタート可能だ。

最大光量であるターボモードに関しては、テールスイッチ半押し×15回の後に全押しをすることで、650ルーメンの大光量瞬間芸(ターボ2)か、280ルーメンを1.8時間の持続型(ターボ1)かを選ぶことができる。この操作系はストリームライト社の製品のテンタッププログラムと似ている。

この操作が成功すると、ターボ1設定時に一回、ターボ2設定時に二回ライトが点滅する。

ターボ1は電池が無くなる限界まで280ルーメンの明るさをずっと保ってくれる。

ターボ2に関しては非常に明るいが、ライトの温度や電池容量が一定を超えるとすぐ明るさが落ちる。

また、ライト点灯中にサイドスイッチをプレス&ホールド(押しっぱなし)にすると、ストロボモード(650ルーメン)に移行する。さらにそこから再度サイドスイッチをプレス&ホールドすることで、70ルーメンで36時間点灯可能なストロボ2に移行できる。最後に使ったモードに戻したい場合は、サイドスイッチを一度押せば元に戻る。

このストロボモードが、タクティカルとデイユースとの両立を図る上で非常に面倒くさい。ストロボモードは記憶こそできるものの、そうするとライトを点灯した瞬間必ず目潰しのストロボとなってしまう。かと言って、別のモードからストロボモードへの移行は、上述した通りまずライトを点灯→サイドスイッチをプレス&ホールドするという手数も時間もかかってしまう。これでは、戦闘と日常の両立はできない。ここさえ改良してくれれば、タクティカルライトとしての優位性は向上する。

また、ストロボモードが無駄に二種類もあるのも個人的には必要ない。長時間のストロボモードを搭載するくらいなら、ビーコンやSOSモードを入れてくれたほうがマシだ。

非常に暗いモード(Firefly)を備えているのは、補給が見込めない状況下や明かりを周囲に漏らしたくない場合に役立つので嬉しい。欲を言うならば1ルーメン以下だと更に良かった。


点灯中はサイドスイッチが5秒間隔くらいで緑色に点滅し、それを何回か繰り返す。また、電池容量が25%を切ると2秒間隔で黄色く一度、10%を切ると1秒間隔で赤く点滅する。他にも、ライトの温度上昇が危険レベルに達すると2秒間隔で黄色く3回、致命的レベルで赤く点滅するといった、インジケーターランプとしての役目も兼ねている。


ポコンと出たテールスイッチの感触は柔らかめで、安価な中華製のそれと似ている。スイッチ音は比較的静かめ。

テールキャップ先端部は角ばっており、グリップ力や滑り止めとしての効果を上げている。右側の突起はランヤードホール。


防水性能は10メートルの深さで2.5時間まで潜ることが可能と、この手の懐中電灯の中では耐衝撃性能共に凌駕している。それを伺わせるように、テールキャップを取っ払って出てくる防水用Oリングは2個用いられている。

テールキャップは反時計方向に少しひねることでロックアウト(誤点灯防止)可能だ。


レンズは、ひと昔前の中国製バッタ物ウェポンライトによく使われたようなTIR(集光レンズ)が組み込まれている。一見すると、スポット寄りの配光パターンになりそうな気がするがどちらかと言えば少し拡散寄りだ。

ストライクベゼルはこうして裏側から見ると意外と深めだ。Armytekの十八番である高い耐久性だが、格闘戦を意識して点灯した状態で巨木に20回ほど打ち付けたが、壊れる気配は一切なく、点灯は維持したままであった。レンズやスイッチ等はパット見だと安価なコンポーネントを使用しているように見えるが、耐衝撃性能10メートルという表記は嘘ではないようだ。

当初、目立つ地金むき出しのストライクベゼルは好きになれなかったが、少々の傷が付いても目立ちにくいので、これはこれでアリかもしれない。


ボディの質感は、少しザラつきのあるソリッドな感触だ。それに加えて、くびれや各所にある凹凸により、グリップ感は想像よりも良い。


他のライトにはあまり見られない工夫だが、サイドスイッチの裏側には指を置く凹みがあり、これが非常に良いグリップ力を与えてくれる。


10.5センチという絶妙な長さ、ボディもヘッドも1インチと統一した太さのなかに、各所の凹凸が指にしっくりと馴染む。おかげで、耐久テストで巨木にこのライトを打ち付けている時も、滑ったり余計な突起で怪我をしたりということがなかった。(さすがに手袋は着用したが)

下手なチェッカリングよりも感触はよかった。3~4倍以上の値段がするSUREFIRE社のEDCL1-Tや、E1Dよりもはるかにグリップ感は良い。


テールキャップ境目にあるくびれのおかげで、逆手・順手持ちのグリップ力は良い。それだけでなく、コンパクトなライトにも関わらず、このような注射器持ちも非常にやりやすい。


さらにグリップ力や利便性を上げたい場合は、写真のようにThyrm SwitchbackSUREFIRE コンバットリングを装着することをオススメする。1インチのテールキャップなのですんなり入るし、なによりもキャップ先端部が角ばっていることにより、スっぽぬけやズレの防止にもなる。


パッケージは紙箱で、付属品は調節可能なランヤード、携帯用ポーチ、Oリング2個、クリップ、予備のスイッチカバーだ。クリップやランヤード、ホルスターは安価な中国製ライトによく付属しているものだ。


説明書は英語ペラ紙一枚。一見ゴチャゴチャしててわかりにくいかもしれないが、難しいことは書いてないし、イラストもわかりやすいので大丈夫。


今回照射テストに関しては、お値段3倍以上のSUREFIRE EDCL1-Tと比較してみた。お互い、タクティカル要素も組み込んだEDCライトで、使用する電池も同じ。明るさはEDCL1-Tが500ルーメンで、こちらが650ルーメン。さて、この明るさとTIRの質、そして値段の差がどう出るのか見てみよう。

EDCL1-Tが165ドルする中、今回のArmytek Partner C1 Proは小売価格が55ドルだ。そして私が購入したショップでは38ドルと、日本円換算で4000円程度。シュアファイヤーはおろか、並の中国製ライトよりも安いと言ってもいいお値段だ。


※画像クリックで拡大可


中央部拡大画像

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100m先に設置した自転車に向かって照射。奥の森林までは150m。

まず同じArmytek Partner C1 Proでも、使い捨てのCR123Aリチウム電池と、充電式の3.6V RCR123Aリチウムイオン電池とでは明るさが50ルーメン前後ほど異なって見える。Partner C1 Proは充電池の使用も可能なので、ランニングコストや明るさを求めるのであればこちらを使ってもよいだろう。

さて、SUREFIRE EDCL1-Tと比べれば顕著だが、明るさの公称値こそEDCL1-Tが500ルーメンと低めだが、遠距離照射性能に関してはPartner C1 Proを凌駕している。Partner C1 Proの遠距離照射性能の公称値は135メートルで、実際のところは150メートル先の森に辛うじて届いている感じが伺える。

ちなみに、EDCL1-Tの遠距離照射性能の公称値は175メートル(ANSI FL1基準)

両者ともTIRレンズを使用したライトだが、その配光パターンに関してはまるで違う。Partner C1 Proは中心光を広めに、周辺光も明るさと広さの両立を図っている。そのため遠距離照射性能は高くなく、特に中距離(20~80メートル)での使用をに力を入れている感じだ。

SUREFIREに関しては、同社伝統のTIRの十八番である遠距離照射性能も重視しながらも、左側面の茂みを見てもらうとわかるが、周辺光の広さもかなり確保している。

詳しくはEDCL1-Tのレビューを見てもらいたいが、周辺光と外縁光の広範囲はそのままに、従来よりも中心光を少し大きめにして使いやすさを向上させている。

同じTIRでも、Partner C1 ProのTIRの質はやはりそこまで高くない。配光パターンにはムラやダークスポットが多く目立つ。とは言え、何倍も高価なSUREFIREと比べるのはお門違いではあるが。


※画像クリックで拡大可

FBIテクニックや、ネックインデックスでの使用を想定して、170センチの高さから15メートル先のベンチに向けて照射。

こうして近距離で見ると、ムラが多いのが気になるものの、Armytek C1 Proが周辺光を明るめに設定しているのがよくわかる。

周辺光より更に外側の外縁光に関しては、C1 Proはムラが多くて不鮮明であるのに対し、SUREFIREの方はTIRお得意の暗くて広大な配光パターンがよくわかる。

C1 ProのLEDの色温度に関しては数値は不明だがWarmとWhiteの二つを選ぶことができる。今回私が購入したものは、Whiteの方だ。明るさに関してはWarmの方が視認性は良いが50~60ルーメンほど低下するようだ。

Conclusion │ 総評

配光パターンは、遠距離で照射しても近距離で照射しても値段相応といった感じもするが、許容範囲内ではある。100メートル以上の遠距離照射能力さえ望まなければ、ちょっと多すぎる気もする多数のモードを使って、どんな用途でもそつなくこなせそうではある。

タクティカルライトとしては、モードを瞬時に少ない手数で切り替えることが苦手なため、ストロボやターボモードを臨機応変に使い分けることが難しい点が足を引っ張っている。この点は日常使いとしながら、万が一の護身用途としても難しい。

耐久性に関しては、この値段からは考えられないほどの作りだ。この点は素晴らしいポイントなので、扱いにくいモード変更の改良さえしてくれれば、コストパフォーマンスの高いタクティカルライトになるだろう。