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SIG SAUERのP220の装弾数を増やしたダブルカラム版であり、ベストセラー拳銃であるP226。こちらの方が値は張るが、グロックとのライバル機種としてよく挙げられる名銃である。私も、とりあえず9ミリの拳銃を選べと言われたら上位候補に入るほどのお気に入りであると同時に、拳銃の楽しみを教えてくれた銃でもある。

SPECS │ 性能諸元

 メーカー(生産国) SIG SAUER(ドイツ。 2016年現在はアメリカ。)
 口径 9mm×19
全長 196mm
銃身長 110mm
重量 900グラム
装弾数 15発+薬室内1発
ライフリング 6条右回り

思い出のハンドガン

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P226の好きなところを挙げろと言われると、まずはそのグリップの握りやすさだろう。弾薬が二重に互い違いに入っているダブルカラムの拳銃は、装弾数は増やせるが、どうしてもグリップの太さは増大する。特に私のような小柄なアジア人には結構重要なポイントで、ただ持つだけならまだしも、実射をしかも何百発も撃つともなればそのストレスは増えてくる。グリップの悪さから弾づまりも起きてくる。あくまで個人的な感想だが、そういう意味ではBeretta M92やGLOCK 17等の他社有名どころはあまり手に馴染まず、まぁ拳銃なんてこんなものかと思っていたものだ。

時は少々昔にさかのぼり、大学時代にアメリカへ留学をした。その当時、ただぼんやりと鉄砲が大好きだっただけの私の頭の中は「鉄砲を撃つ鉄砲を撃つ鉄砲を撃つ…」と、勉強そっちのけでそのことばかり考えていた。そして、付近の射場へ片っ端から電話をかけて、怪しいまともに銃を撃ったことすらないアジア人に銃を撃たしてくれるとこはないかと聞いて、OKを出してくれた射場へ飛び込んだ。この射場には大変感謝している。こんな怪しいまともに銃を撃ったことすらないアジア人に銃を撃たしてくれるだけも嬉しいのに、私があらかた撃ち方・装填・故障排除のやり方がわかっている(と言ってもエアーガンでやってたのと知識としてあっただけのあやふやなレベルだが)と見るや、なんと店員は「おやおや坊や、一通りできるじゃないか。んじゃ後は好きに撃ちなよ。」と店に戻っていった。今考えてみれば危ない話しだが、そのおかげで好き勝手に初体験をいたすことができたわけである。この時、とりあえずと9ミリと45口径は基本だよなと何気なく選んだのが、ウィンチェスター版 M1911とこのP226Rである。(Rは基本のP226のフレームにライトやレーザーの載せれるように20mmピカティニーレールを搭載したモデル)

初恋のハンドガン

まず手始めにガッツリと行こうかとM1911を50発ほど撃った。詳しくはウィンチェスター版 M1911のページを見てもらえればよいが、この銃、老朽化してるわ、メンテもそこまでマジメにやっていないわで、ただでさえ反動が大きく小柄な人間だと扱いにくい45口径拳銃がより扱いが難しくなっていた。それが、実銃初心者の不器用な私に当たったのだからひとたまりもない。まるで関節技でもかけられるかのように手首を痛めるし、3発に1回くらいのペースでジャムを引き起こすのではたまったものではない(おかげで故障排除の練習はタップリとできたが)。20発を撃った段階から、楽しみは苦行へと変わって行き、あとは50発を何とか消費することで終わってしまった。完全に老兵にシゴカれた感じだ。

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M1911を撃ち終え、早くも心身ともに満身創痍な中、今度は100発の9ミリ弾が私を待ち構えている。そして実射。。。まぁなんとマイルドで撃ちやすいことか。まるで頑固でへそ曲がりな老兵の後に、若いが経験豊富なインストラクターにバトンタッチしたようである。9ミリと45口径じゃあ当然だろと言われるかもしれないが、後日他の9ミリとP226を撃ち比べた時でも、その撃ちやすさは群を抜いていた。この時、20メートルの屋内射撃場で撃っていたのだが、ただでさえ下手で、しかも満身創痍な私でも、ターゲットの中央にどんどん弾が吸い込まれて行き、ジャムなんて皆無であった。何よりも心身共にストレスが格段に少ない。それはやはりこのP226の手に吸い付くようなグリップが特に効いていた。人間工学の重要性を身を持って感じた瞬間である。今でこそ、近年H&K社や、S&WのM&P等の素晴らしいグリップの拳銃が多いが、当時普及していたラインナップではこのP226は素晴らしいものであった。握った瞬間、まるで元々私の身体の一部であったかのように、手から「おかえりなさい」というかけ声が聞こえてきそうな感じであった。

この後、調子に乗った私はダブルタップに始まり、Center Axis Relock、フラッシュライトと拳銃の各種テクニック等やりたい放題をして100発を消費した。普通、初心者がこんな応用射撃をいきなりやったのでは、危険極まりなく、ろくな結果にならず、現実の厳しさが無慈悲に襲ってくるものだが、P226はそんな私の夢を壊さないように見事にバックアップしてくれた。結局、帰国するまでにP226を何百発撃っただろうか?完全に惚れてしまった。当時私は、訓練用のセカンダリーとしてKSCのUSPコンパクトを使用していたが、出国前、P226用のブレードテックホルスターを買う頃にはドナドナの算段が付いていた。

もちろん、パーフェクトだP226というわけではない

と、ここまで酒場で語る初恋の思い出のように長文を書いたが、非の打ち所なしというわけでもない。気になる点もある。

○シアが落ちる瞬間、つまり引き金のキレどころが少しわかりにくい。言うなれば、
引き金の遊びを引き切り→あ~そろそろだ→おっ、キタキタ→ここだ!→BANG!という流れの「ここだ!」が無いイメージである。特に他の拳銃と撃ち比べていると気づいてくる。これは各地でも言われており、面白いのが、これも某有名サイトで言われていることだが、ガスブローバックガンの東京マルイP226Rでも何故か再現されている。
○デコッキングレバーが邪魔。これは時と場合によるし好みにもよる。グロックのような無駄ナシのっぺら坊と比べると邪魔と感じることはたまにある。
○特にスライドの高さからどうしても高く構えがちとなってしまう。これもグロックと比べての話し。ストライカー方式以外の拳銃だと仕方ない。
○Center Axis Relockをする際にマガジンリリースボタンが干渉してマガジン脱落やジャムの危険性がある。これもこの方式ならば仕方ないことだ。そういう意味では、近年私はH&K社のレバー式である拳銃を好んでいる。
○価格が高め。だいたい900~1000ドル前後する。同じく信頼性も高く、周辺機器も多めで安い(500~600ドル前後)となるとグロックの方が各方面で人気が出るのはわかる。

ザッと思い出した感じではこんなところだが、全体的な使い勝手の良さから比べるとあまり負担には感じない。余計なマニュアルセーフティが無く、安全な使い方さえ守っていれば即応性が高いよい銃だ。引き金の重さも、ダブルアクション・シングルアクション共に重すぎず軽すぎずといった良いバランスでもある。近年では、P226E2となり、よりグリップは握りやすくなっている。何よりも、拳銃はこんなに楽しいもので、ライフルに申し訳程度に装備する武器じゃあないんだと教えてくれた良い銃だ。

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