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ジャンル:ライフルスリング、小銃用負い紐

激しいガンハンドリングに強いワンポイントスリングにも、携行に便利なツーポイントスリングにもなる便利なスリング

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) MAGPUL(アメリカ合衆国)
材質 硬化鋼、ポリマー、ナイロン
カラーリング ブラック(本製品)、グレー、コヨーテ、レンジャーグリーン
価格 49.95ドル

前置き │ スリングの必要性と種類

前置きが長いので、スリングのことなんて知ってるよという人は飛ばしてくれていい。

ライフルマンにとって、スリング負い紐)は必要不可欠だ。まぁ、作戦行動中に紐は絡むわ、マガジン交換や左右へのスイッチングには邪魔になることもあるし、週末にだけライフルを一挺持って射撃を楽しむのであれば、スリングは必要ないかもしれない。ただ、ライフルを仕事に使う人間は、どんだけ邪魔であろうと必要不可欠である。銃は射撃している時よりも、ただ持ってるだけの方が圧倒的に長い。そんな時、快適性や疲労軽減だけでなく、安全上の観点からもスリングは必需品なのだ。

スリングには主に3種類ある。

ワンポイントスリング

○シングルポイントスリングとも。このスリングの利点は、何と言っても銃をスリング無しで持っているかのような自由度の高さである。閉所・複数で・あらゆる方向から攻められるような状況でも、射手の動きを阻害しにくく、即応性のある行動が可能だ。左右への銃のスイッチや、弾倉交換、拳銃等のセカンダリウェポンへの切り替えもお手の物である。

○欠点は、そのまんま動きの自由度の裏返しである。一点でしか銃を保持していないため、銃を持ってない時は常にブラブラと邪魔になり、携行性が悪い。また、ツーポイントスリングのようにスリングを利用しての銃を安定させて射撃精度を向上させるような技はやりにくい。

 

ツーポイントスリング

○銃のスリングと聞くと、このタイプを思い浮かべる人は多いだろう。そもそも何か重くて長い物とかを持ち運ぶのはだいたいこういう紐が付いている。

○このタイプの利点は、銃の携行性が高いことだ。スチャっと肩にかけ、銃を後ろで背負うも前で背負うも簡単に行うことができる。長距離・長時間の移動はもちろん、銃の携帯は義務付けられているが、同時に何か別の作業をしなきゃならない時にも役立つ。

○また、スリングの長さを調整すると、銃を構えた際に程よいテンションが加わり、射撃姿勢の安定性向上にも役立つ。

○欠点は、スリングを肩にかけた状態での瞬時のスイッチング等の素早く、大きな動きが苦手な点だ。メーカーによっては、そのような行動がやりやすいようにワンタッチで長さを調節できる機能があったりするが、それでも煩わしさはある。邪魔になったが故に、2点スリングを肩から外して射撃しているシューターはよく見かける。

 

スリーポイントスリング

○ワンポイントスリングとツーポイントスリングの良さを合わせ持ったようなスリング。(あくまでイメージです)

○銃を体の近くで密着させることができ、なおかつ素早く射撃できる即応性もある。携行する際も、射撃をする際も常に安定したスタイルで保持ができやすい。

○欠点はその複雑さにある。紐が多いので、銃の各種レバーやスイッチ等の操作、左右へのスイッチングがやりにくく、最悪紐が絡んだりして本末転倒になってしまうこともある。

○慣れれば簡単だが、初見だとこのスリングはどう使えばいいのかわかりにくい点もある。そのため、このスリングの本来の使用目的から外れた使い方や、長さ調節をよくわかってないシューターが、射撃場でちらほらと散見される。

瞬時にワンポイントからツーポイントへ


このスリングを買った当初、私は某国実力組織の小銃用3点スリング(スリーポイントスリング)に嫌気が差していた。そう、あの3点スリングだ。知っている人ならわかると思うが、負い紐調整は面倒くさいし、樹脂パーツは行動中にカチャカチャとうるさく、すぐ破損する。また、3点スリング特有の紐が干渉し、弾倉交換や左右へのスイッチングのやりにくさもたまらない。そんな中、アメリカ軍のライフルマンが、便利そうなスリングを持っていた。コレだ!と思い、紹介してもらったのがこのマグプル社の、MS3 マルチミッションスリングシステムだ。


マグプル社
に関しては、もはや多くを語るまでも無いだろう。弾倉に履かせるパンツ作りから始め、名物銃器インストラクターがかつて在籍しており、樹脂製弾倉を始め様々なガンパーツを作り続けているあのメーカーだ。

一見、シンプルな作りのワンポイントスリングだが、瞬時にツーポイントスリングに変化するという特性がある。


このMS3スリングには、前任者がいた。それがMS2だ。MS3同様、ツーポイントとワンポイントスリング両方に変化でき、大変な人気商品であったが、スリング紐が少し細く、身体に食い込んで疲れやすいという欠点があった。MS3はそれを補ったものだ。ちなみにMS3のスリング幅は3.22cm。

また、MS2との大きな違いは、全体的に金属パーツが減り、代わりに樹脂パーツが増えたことだ。写真の留め具もほとんどが樹脂(強化ポリマー樹脂)である。


留め金部分もユニークな構造で、鉤爪状になっている上半分だけが金属(強化鋼)で、下半分はポリマー樹脂になっている。これにより、よけいな金属音が少なくなっており、サビも起きにくい。樹脂とは言え、耐久性の不安はなく、今まで散々な扱いをしてきて傷や削れは少しあるが、まだまだ余裕で使っていける。留め金はテンションも程よく、親指での脱着は簡単だ。

留め金下半分からポチッと出ている突起は、ロック機構で、これを押し込むことで不意に留め金が外れないようになっている。とは言え、今までこのロックをしてなくてもスリングが銃から離れたことは、皆無だった。

ただ、留め金を樹脂パーツにしてしまったおかげで、MS2のような細い留め金ではなく、幅広いタイプになっている。これにより、使用する銃器によっては、スリングスイベルにそのままカチャっと付けることができなくなっている。某国実力組織の小銃にもそれは当てはまり、私はこの留め金が付くように金属製のワイヤーを増設して使っていた。ここは少し残念な変更点だ。



装着はこのように行う。あとはスリングの大きな輪っかに首と片方の肩を入れればいいだけだ。

使用する銃器の重量や、服装によっては肩に食い込んでくることがあるが、その場合はカバン用の肩パッド等を装着すれば解消される。

銃器ではなく、スリング側に付いている留め金を外すと、瞬時にツーポイントスリングになる。



スリングにある、この紐を束ねて盛り上がっているような部位は何か?これがもう一つの便利な機能で、これを手でグイッと引っ張り上げることで瞬時にスリングの長さ調節が可能となる。

実に握りやすく、なおかつあまり身体等に干渉しない大きさで、簡単にスリングを長くできるので、ツーポイントスリングへの移行も瞬時にできる。

スリングを長くするのは、片手で可能なので、銃器を離すことなく操作可能だ。スリングを短くする場合は両手が必要。

この部位は、現在販売されている(2018年)2世代目では、よりロープロファイルで簡単に調節できる樹脂パーツへと置き換えられている。


ワンポイントスリングとツーポイントスリングの利点をそれぞれ味わえる点は良い。森林地帯や、CQB等の限定空間や閉所戦闘では、銃器を激しく右に左に、上に下にと動かすことが多い。スイッチングや、弾倉交換、故障排除の際に、スリングが邪魔で動きに制限があるようでは命がいくらあっても足りない。こんな時はワンポイントスリングが一番良い。

→ワンポイントスリングは、一点のみで銃を保持するその特性上、AR-15タイプの銃器にはレシーバー(機関部)とストック(銃床)の境界線基部に装着するのが良い。某国防組織の小銃は、デフォルトの状態ではなそれができないので、この部位にアダプターを付けて装着していた。

MS3のワンポイントスリング状態で銃を左右の肩へ持ち変える、いわゆるスイッチングをする場合は、写真のようにストック(銃床)と首を上に上げる方式を取ると、スリングが邪魔になりにくいのでおすすめ。



ツーポイントスリングにもできることで、使用する銃器の幅も広がるのが嬉しい。貧乏性である私は、このスリング一本で、日々の訓練用エアソフトガン、各組織や機関で実銃射撃訓練をする際に貸与してもらってる銃器、所持している散弾銃とほぼ全ての銃器に使いまわしている。

普段の徒歩行軍等の移動時や両手を使う作業をする際には、ツーポイントスリングで快適に携行し、戦闘時や脅威度の高いエリアではワンポイントスリングに切り替えると言ったことが可能だ。

マグプル社のスリングは、現在(2018)のところ大きくわけて4種類のラインナップがあり、それぞれ特性がある。

RLS Sling:RLSはRifleman Loop Slingの略。最も安価でシンプルなツーポイントスリング。専用のアジャスターを動かすことで、スリングを腕や肩に通し、狙撃をする際の安定性を高めることができる機能付き。

MS1 Sling:RLSに留め金を付けたようなツーポイントスリング。MS3同様、簡単に長さ調節が可能。

○MS3 Sling:今回紹介したもの。ツーポイントとワンポイントスリングに瞬時に変更可能。

MS4 Sling:MS3の留め金をQDタイプに変更し、ワンプッシュで脱着可能にしたロープロファイルモデル。

各人の好みや、装備、スタイルに合わせて選ばれたし。