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ジャンル:ホルスター

ただ拳銃を差し込んでいるだけの「Level 1」ホルスターでは、奪われたり脱落が不安…そんな方はこちらの「Level 2」ホルスターはいかがだろうか?

執筆時期:2017年7月

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) BLADETECH(アメリカ合衆国)
材質 カイデックス
カラーリング ブラック、カーボン、ダークアース、OD、フォレッジグリーン
価格(購入価格) 119.99ドル(2016年 93.99ドル前後で購入)

シンプルなロック機構で信頼性の高いLevel 2ホルスター

ホルスターは、そのロック機構の数でレベル分けされている。(Holster Retention Levels)

Level 1:ただ拳銃をホルスターに入れておくだけのもの。ロック機構無し。

Level 2 :拳銃をロックしておく機構が一つあるもの。

Level 3:拳銃をロックしておく機構が二つあるもの。

市場で流通しているものは、概ねこの三種類だ。どのレベルのホルスターを選ぶかは、所属する組織の規定、任務内容や使用目的、拳銃を携行するエリアの状況や脅威度、想定される拳銃使用時の状況等で選定することになる。言うまでもないが、レベルが低いほど素早く拳銃を抜くことができるが、脱落や奪取される可能性は高まる。かと言って、レベルが高くなってロック機構が多くなったり、その構造によっては拳銃を抜くのが遅くなる。私は、ロック機構が一つだけの、親指でロックを解除するタイプ(Thumb break holster)のLevel 2ホルスターが好みだ。このタイプのLevel 2ホルスターは、昔からボタン式で存在しており、現在はバネ等を利用したよりメカニカルで素早くロックが解除できる構造のものが流行である。今回紹介するブレードテック社WRS Level 2 DUTY HOLSTERもそんな感じだ。


ホルスターは、ザラつきのあるマット処理をされていた、同社のSIGNATURE OWB ホルスターよりも、ザラつきが抑えられており、少し光沢があるボディとなっている。激しく汚してしまった際も、ホルスター表面に泥がこびり付きにくい。今回はHK社の45口径拳銃として有名なHK45用(右利き)を選んだ。上部にあるループは、普段拳銃が抜け落ちないように守っており、ロック解除と共にこのループはバネの力でカチンと90度回転して拳銃が抜けるようになる。


ホルスターのベルトループは様々なものが用意されている。今回は、1cm~5cmまでのベルト幅に調節可能なASR(Adjustable Sting Ray)ベルトループをチョイス。その他にもMOLLEシステムに差し込んで使えるものや、TEK-LOK、レッグリグタイプのものまで幅広いニーズに対応している。ホルスター下部のネジは、上下の調節が可能なスライダー式となっており、細かなセッティングが可能だ。…なのだが、私の個体はネジを回した時に一緒にネジ穴の方もクルクルと回ってしまい、ネジを取り外すどころか緩ませることもできない。そのようなネジが各所にあるため、挙句にベルトループの交換すら自力ではできない状態だ。ヒートガン等で温めれば中のネジロック剤が溶けて外れる。という荒業を用いない限りムリとの話も聞く。この点はまったくもって話にならない欠陥である。これでは、何のために各種アタッチメントやTEK-LOK等に対応させているのかわからない。


ホルスター下部銃口側。サイレンサーアダプター等を出すほどの隙間は開いていない。


このホルスターは、腰に備え付けた際に銃が約15°ほど斜めになるようにオフセットされている。腰に対して垂直になるよりも、拳銃のグリップが外を向くようにした方が抜きやすいからだ。


西部劇のリボルバーを差しているホルスターを見てもわかる。長い拳銃はそのほうがより素早く抜けるのだ。


ただ、この方式は身体に対してホルスターが出っ張ってしまう面積が増えたり、自分の身体、特に大腿部に銃口が常に向いているので好みにわかれる。


ホルスターのロックテンションは、従来通り銃口側の2つのネジの締め具合で調節できる。テンションも何も無いスカスカの状態から、ガチガチに拳銃をホールドするような状態まで、好みに合わせて調節可能だ。また、一つ面白いところが、引き金側のネジだけをガッチリ締めて、銃口側のネジを緩ませておくと、銃の抜き差しをする際にカチッとワンクッション置いたテンションをかけることもできる。これはなかなか心地よく、銃がちゃんと保持されているかわかりやすい上に、絶妙なテンションで緩すぎて銃が動きで浮き上がるようなこともなければ、キツすぎて銃を抜く際にベルトごとグイッと持ち上がりそうなこともない。


ホルスターの後面は、トリガーガードの底面をみせる形で開いている。SIGNATURE OWB ホルスターの時は、ホルスター前面、薬室部分までがガバッと開いているので、そこをガイドに拳銃をホルスターに戻すことができたが、こちのホルスターは前面が塞がれているので、後面をガイドに拳銃を戻すとやりやすい。


さて、この拳銃のループ状のロックだが、ちょうど右手親指が当たる部分にロック解除レバーがあるいわゆる「サムブレイク」タイプである。


このレバーを押すことで、拳銃が抜けないようにロックしているループが、カチャッ!と勢い良く降りて拳銃を抜くことができる。私はこのメカニカルサムブレイクタイプのLevel 2ホルスターが好きである。このタイプの他に有名なものは、BLACKHAWK社のSERPAホルスターのように、人差し指で解除するタイプのものがあるが、こちらは人差し指で解除した後に、力の入った指がそのままトリガーに行き、暴発させる恐れがある。故に組織や射場によってはこのタイプのホルスターを禁止しているところも少なくない。


ただ、このメカニカルサムブレイクの方式にも2種類あり、レバーを真下に押し下げる物と、自分の体幹に斜め下に押し込むタイプのものがある。このホルスターは後者である。このタイプは、まだループとホルスターをボタンで留めていた頃のホルスターと同じだ。斜め下に押し込むこのタイプは、どうしてもただ真下に押し込むタイプのものよりもロック解除が遅れてしまう。人間が危機を感じて、咄嗟にビクッ!と反応した際には、下に押し下げるだけの方が生理的な動きの理にかなっている。そのため、素早く高速でロックを解除しようとするとただ真下に押し込むだけになってしまい、ロック解除を失敗することがある。ただ、この方式も利点はある。まず、拳銃を奪取しようと悪意を持った人間が咄嗟に奪おうと思った際、意外と取られにくいのだ。勘の良い人は、ロックレバーを押さないと拳銃にはロックがかかってるんだな、、、とわかるらしいのだが、これを大半の人は頑張って押し下げようとする。ただ押し下げようとしただけではロックがなかなか外れない。「レバーを押すと拳銃のロックが外れる」とだけ7人ほどの人間に説明して、私が無抵抗の状態で拳銃を抜くように指示したが、3秒以内に抜くことができた人間はわずか1人だけで、10秒経過しても抜けない人間が5人もいた。ガンマンにとって自分の飛び道具が奪われることはかなりマズい状況だ。そういうセキュリティー面は良いのかもしれない。


また、ロック解除レバーはただ単にバネの力で戻ろうとするループを引っ掛けているだけなので、故障や、異物が詰まってロック解除ができなくなる可能性が低い。下に押し込むタイプのホルスターや、SERPAホルスターは、異物混入や故障ででロックが解除できなくなったという報告が多数なされているだけあって、このようなシンプルなメカニズムはタフさが求められる過酷な環境には強いだろう。


ロック解除レバーは、何かに接触しての誤作動等を防ぐため、前面部分は覆いがされている。


このホルスターの価格は1万円前後と、安い買い物ではない。信頼性はあるかもしれないが、使い勝手にクセがあるのと、せっかくの拡張性を台無しにしてしまっているのはいただけない。